英国エリートが今も影響力を保っている理由

このような、カネ・コネ・チエをぐるぐる回すトライアングル・システムの骨格は、本質的にはイギリス以外の社会にも見いだせるものだと思います。格差が広がる日本社会に対して得られる示唆としては、まずは、各キャピタルにアプローチする「はしご」を増やすこと、そしてどこに「はしご」が下りているか、さらには「はしご」の登り方のイメージを社会全体で共有することではないでしょうか。

橘宏樹『現役官僚の滞英日記』(PLANETS)

機会均等とは、カネを得る機会だけではなく、チエを得る機会、コネを得る機会の均等にも押し広げて考えることが可能だと思います。カネの再配分だけではなく、チエとコネの再配分を意識することは有効だと思うわけです。

所得の上がり幅に限りがある人々に、コネを得るチャンス、チエを得られるチャンスを増やし、得られたコネやチエをカネに換えるチャンスや方法を、広く共有していければ、「格差」是正にプラスになりそうです。

「カネ・コネ・チエ」がエリートの3大要素と言ってしまうと、あまりにも当たり前であっけなく聞こえてしまうところもあると思います。しかし、この3者の「バランス」が整っていること、ひいては3つのキャピタルの「転換能力」に秀でていることこそが、英国エリートが今日も影響力を保っている底力の本質だと僕は指摘したいわけなのです。

本稿では、紙幅の都合上、日本のエリートとのより詳細な比較や、日本流に導入できそうなポイント、日本のビジネスマンがよりタフに社会を生き抜くために役立ちそうな具体的な示唆などについては、割愛しました。これらは書籍『現役官僚の滞英日記』(PLANETS)で記述しております。ご参照いただければ幸甚です。

橘 宏樹(たちばな・ひろき)
官庁勤務。2014年夏より2年間、英国の名門校LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス)及びオックスフォード大学に留学。NPO法人ZESDA(http://zesda.jp/)等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞、ピアノ、サッカー等。twitterアカウント:@H__Tachibana
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