婉曲に伝えるのは、どうか
しかし「ネタ」として昇華できるならいいですが、親しい同僚ならともかく、人間関係のベースがない上司と部下の間柄で笑いに走ってしまうのは考えもの。上司はパーソナリティを馬鹿にされたのではと、ますます嫌な気持ちになってしまいます。
第三者の話という体にして、「○○さんの話なのですが~」と婉曲に伝える人もいます。それもやめたほうがいい。結局は「変な気を使わせた」と相手に一層、恥の意識が発生してしまうから。基本的にそっとその場を収めるのが一番なのです。
鼻毛が出ている場合は、厄介です。ズボンのチャックや、ベルトが外れていたり、ボタンの掛け違いなどは、その場で言えば直せるもの。対して、鼻毛や、ほかにも体臭や、反対に香水の匂いがキツいときなどは、その場では改善できません。
相手自身が「恥ずかしい姿」なんだという意識を明確化してしまって、それから直しもできない。指摘する側には、より慎重さが求められます。
体裁を整え直すための時間やトイレなどプライベートな環境が用意されている場所で、指摘することが必要でしょう。
菅原健介(すがわら・けんすけ)
1958年東京都生まれ。横浜国立大学教育学部心理学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程心理学専攻修了。文学博士。聖心女子大学文学部教授。専門は社会心理学、性格心理学。研究テーマは羞恥心、対人不安、自己呈示。著書に『羞恥心はどこへ消えた?』(光文社新書)がある。
1958年東京都生まれ。横浜国立大学教育学部心理学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程心理学専攻修了。文学博士。聖心女子大学文学部教授。専門は社会心理学、性格心理学。研究テーマは羞恥心、対人不安、自己呈示。著書に『羞恥心はどこへ消えた?』(光文社新書)がある。
(構成=伊藤達也 写真=iStock.com)