頷きや感嘆、驚きの言葉や褒め言葉を返す

もっとも、会話の場所はいつでも選べるわけではないし、担当者情報を仕入れるルートがあるとは限りません。

そんなときに使える汎用性の高いネタを、すぐに覚えやすいようシンプルに絞り込んだ言葉があります。

「きにしいたけ」がそれ。「き」は季節、「に」はニュース、「し」は趣味、「い」は衣装、「た」は食べ物、「け」は健康。この頭文字を6つ並べたものです。もっと長いのもありますが、覚えづらいので、まず「木に椎茸」と覚えてください。

全部同じようにネタを持って話せなくとも、6つのうち1つ、2つ自分で得意分野を決めてもいいでしょう。

この「木に椎茸」で、まず相手が乗ってくる話題を探ります。そのために、例えば「い」なら「素敵な服ですね。それ、どちらで買われたんですか?」などと、まず質問を投げかけます。

そこで、相手の答えに対して「共感」することが大事です。軽いものであれば頷きや感嘆などを、あるいは驚きの言葉や褒め言葉、関心を示す言葉を返します。同意できないことでも、否定や反論をせずに「なるほど……」「そういうことなんですね」とあいまいな頷きを返して、相手がさらに話しやすいように持っていきます。

そして、そこからさらに深掘りする質問を投げかけるのです。そうすれば、苦手だと思っていた人の意外な一面が見えてきて、境遇、趣味などで自分との共通項が見つかれば、自分への相手の認識が「身近な人」に一変し、コミュニケーションが取りやすくなります。こうすれば、相手の「鉄板ネタ」を少しでも見出せるようになります。

この間、所要時間はせいぜい1~2分。繰り返しますが、大切なのは「共感」と「深掘りの質問」です。

▼相手が口を開くネタ「木に椎茸」
き……季節、天候
「急に寒くなりましたね」「最近はお天気読めませんね」etc 万人が共有できる。
に……ニュース、最近の出来事
「株は高いのに、実感ありませんね」etc 政治ネタ・宗教ネタ、スポーツの贔屓チーム・アンチ○○etcは避けたほうが無難。
し……趣味
「釣り、お好きなんですか?」etc 事前に情報収集、もしくは顧客の自宅などその場で探す。
い……衣装、装身具
「それ素敵ですね。どちらで買われたんですか?」etc 靴・バッグ・時計などこだわっていそうなものを褒めると喜ばれる。
た……食べ物、食事
「いま、何が旬なんですか?」「秋刀魚、今年は安いですね」etc
け……健康
「最近ちゃんと眠れてますか?」etc 特に年配相手だと話題に事欠かないが、深入りしすぎると暗くなるので注意。
相手に質問する→相手から返事→共感&さらに質問で深掘り→自分と相手の共通項発見!→コミュニケーションが容易に→相手の「鉄板ネタ」を見出す
(この間、約1~2分)
大久保政彦(おおくぼ・まさひこ)
プログレス セールスコンサルティング代表
1965年、東京都生まれ。88年文教大学人間科学部教育学専修卒業。国産・外資系自動車販売会社を経て、2005年人材育成会社設立に参加、セールスを中心とした人材育成を行う。16年より現職。現在、メーカー、販社にて営業研修や実践トレーニングによる即戦力の育成を促進。
 
(構成=金井良寿 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)
【関連記事】
トップ営業マンが使う"3つの基本テーマ"
だから"話したいことを話す人"は嫌われる
銀座ママ「忘れられない話上手な男たち」
吉本芸人からトップ営業に転進できた理由
「相性の悪い相手」との悩みが消える習慣