夜ごと、功成り名を遂げた男たちの憩いの場となる高級クラブ。50年以上彼らと接し続ける、銀座老舗クラブのママを直撃した――。

一日の行動を日記のようにしゃべる人はダメ

私は東京・銀座の「クラブ順子」のママとして50年間、政治家、経営者、スポーツ選手、作家など各界で成功している人をこの目で見てきました。小泉純一郎さん、小沢一郎さん、五木ひろしさん、なかにし礼さん、故平尾昌晃さん、故星野仙一さん……安倍晋三首相はここで誕生会もしてくれました。

田村順子●1941年、東京・西巣鴨生まれ。東洋女子学園高等部卒業。山口洋子が経営する銀座クラブ「姫」にホステスとして勤務。66年、独立し「クラブ順子」開店。政・財・芸能など各界に幅広い人脈を持つ。

江本孟紀さん(元参議院議員、元プロ野球投手)が今秋の叙勲で旭日中綬章を受章されたとき、お祝いのお電話をしました。江本さんはここに来られてもお酒は飲まないし、タバコも吸いません。コーヒーを飲みながら、他のお客様から政治のことを聞かれても、嫌がらずにこやかに説明してくれますし、私たちの愚痴も聞いてくれます。背が高いうえに笑顔が素敵なんですね。

男性を見極めるには、やっぱり第一印象ですね。これはものすごく重要です。おしゃれかどうか、姿勢、目線、笑顔。それからどんな靴下をはいているか。どんなバッグを持っているか。お店にパッと入ってこられたときに見せる笑顔でその人の人柄がわかります。笑い方にもいろいろありますが、ムスッとした中にも笑いがある人、ニッとした笑いを見せる人。その笑いの雰囲気で、その人の品格ややる気満々かどうかもわかります。

森喜朗元首相は「良いしゃべり」

ユーモアがあってジョークがわかる人は大好きです。森喜朗(元首相)先生は、世間ではいろいろ言われますが、言葉のキャッチボールがとても上手。明るくて楽しい「良いしゃべり」だから、周囲はいつも笑いが絶えません。

あるとき、体格がいい森先生に、店のある女の子が、冗談ではなく「プロレスラーの方ですか?」と聞いてしまいました。普通なら怒ってもおかしくありませんが、森先生はカラオケのマイクを片手に「そうだよ。こないだも勝ったんだよ」と軽く返されました。

ジョークっていうか、返しがうまい方。楽しいから人が寄ってくるし、それが人をまとめる力のもとになっているのだと思います。