減速傾向が続いていたインド経済が反転しつつある。ひとつのポイントは国会での「ねじれ」の解消だ。近くモディ首相の率いる与党連合が下院だけでなく、上院でも過半数を占めると見込まれている。政権基盤が安定すれば、国内外の投資マインドが改善し、経済成長率は中国やASEANより高い7%台に回復するだろう――。
▼2018年を読む3つのポイント
・高額紙幣廃止やGST導入に伴うマイナス影響の一巡により景気は持ち直し
・ビジネス環境の改善や政治基盤の安定化を背景に投資も拡大
・欧米の金融政策の正常化や環境規制の厳格化には留意が必要

親ビジネス的なモディ政権の経済政策

2018年のインド経済は、(1)これまでの景気下押し要因の一巡、(2)ビジネス環境の改善を受けた投資の持ち直し、(3)政治基盤の一段の安定化に伴う経済改革ペースの加速、の3点を主因に成長率は持ち直していくと見込まれる。

最初に、再成長のカギを握るモディ政権の経済政策ついて、簡単におさらいしておこう。グジャラート州の経済改革を通じた外資誘致で手腕を発揮したモディ氏は、2014年5月に首相に就任して以降、GSTの導入、外資規制の緩和、破産倒産法の整備、建設許可手続きや事業設立に関するオンラインシステムの導入などの取り組みを進めてきた。

これらの政策には、これまで成長を阻害してきた複雑かつ非効率なビジネス環境を打破し、内外からの投資を促進しようという狙いが込められている。

高額紙幣廃止やGST導入の影響は一巡

モディ政権の経済政策が短期的には景気を下押してものの、すでに悪影響は一巡しつつある。インド経済は、2017年前半にかけて減速傾向が続いた。これは、マネーロンダリングや偽装紙幣の取締りを強化するため、2016年11月に政府が突如打ち出した高額紙幣の廃止後の現金不足や、2017年7月からのGST(Goods and Services Tax)の導入に伴う混乱などが原因であった。実質GDP成長率をみても、2017年4~6月期に前年比+5.7%と、2014年1~3月期以来の低成長となった(図表1)。

しかし、これらの景気下押し要因は一巡しつつある。高額紙幣廃止のマイナス影響は、2017年前半にかけて新紙幣の供給が進んだことに加え、電子マネーやインターネットバンキングなどのデジタル決済の利用も急増したことにより、すでに解消されている。

GSTの導入についても、一部の企業では依然として混乱が続いているとの報道はあるものの、政府や企業の新たな納税システムへの移行はおおむね順調に進んでいる。GST導入により税率が低下した日用品や自動車では導入前に買い控えが起きたが、GST導入後の販売は持ち直している。景気下押し圧力が薄れた結果、2017年11月末に公表された7~9月期の実質GDP成長率が6四半期ぶりに加速するなど、各種経済指標にも底入れ感が見られるようになってきた。