診療科の「自由標榜制」を見直せ
沙鴎一歩は医師の偏在からくる医師不足を解消することは、簡単だと考えている。
繰り返しになるが、医師の偏在が解消されないのは、医師が勤務地や診療科を自由に選べるからだ。だからこの自由を医師法や医療法によってある程度制限する必要があると思う。
たとえば医学部卒業後に地方の病院で数年間勤務することを都心での開業の条件にする。そのかわり家族を養えるだけのじゅうぶんな給与を保証する。
また「自由標榜制」という診療科を自由に選べる制度も見直す。病院勤務医の不足する救命救急や産婦人科、一般外科などに一定の期間勤務しない限り、これも開業できないようにする。これらを実行すれば、医師の偏在はなくなるはずである。
医療は医師のためにあるのではない
だが、こうした施策では、すでに開業している医師などは対象外になる。国の検討会が論議を進める「地方勤務を組み込んだキャリア形成プログラム」に対しては、「医学生や研修医ばかりに負担を押し付けている」という指摘もある。
ならば現実的対応のなかで、中高年の開業医にも交代で地方で働いてもらうシステムを作ってはどうだろうか。経験を積んだ医師が一定の期間、地方の病院で働くことによってその病院が活気付くことは間違いない。何よりもいちばん喜ぶのは患者だ。
こうした施策に対し、医療界は「医師は自由で、強制的に規制されるべき存在ではない」と強く反発するだろう。しかし医師は国民の健康を守る公共性の強い存在だ。そして医師不足、医師偏在で大きな損害を被るのは患者である。医療はだれのためのものか。医師のために医療があるのではない。患者のためにある。医療関係者はこれを忘れないでほしい。
患者側も厚労省など行政に任せっきりではいけない。医師の偏在をどう解決すべきか。真剣に考える必要がある。