最高裁大法廷が12月6日、NHKの受信料制度を合憲とする初判断を示した。だが全国には900万世帯を超える「未払い世帯」がある。大法廷は「テレビ設置時にさかのぼって受信料の支払い義務が生じる」との判断を示したが、NHKはどのように徴収するのだろうか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏が、各紙の社説を読み解きながら考察する――。
東京都渋谷区にあるNHK放送センター。(写真=時事通信フォト)

受信料の徴収活動を強めるのか

最高裁大法廷が12月6日、NHKの受信料制度を合憲とする初判断を示した。

これを受け、新聞各紙は社説で「合憲判断にあぐらをかかずに公共放送のあり方についてあらためて考え直すべきだ」といったNHKにとって厳しい論を展開した。

今回の合憲判断は、NHK側の主張を認めてものだ。今後、NHKが受信料の徴収活動を強めることはないのだろうか。

最高裁判断によると、テレビ設置時から受信料を支払う必要があるというが、これまで受信料を一度も支払ったことがない視聴者がテレビを設置したときから何十年もさかのぼって受信料を徴収されればたいへんな金額になる。徴収は現実的ではない。

受信料の強制は時代に合うか

新聞各紙の社説を読み比べて一番説得力があったのは12月7日付の東京新聞の社説だった。東京社説はまずお得意のリードでこう指摘する。(東京社説は他紙と違って前文を付けている)

「NHKの受信料はテレビを設置したら支払い義務が生じる。最高裁大法廷はこれを『合憲』とする初判断をした。だが、今や技術革新が進む。昔ながらの方法・法規が時代に合うのか疑問にも思う」

このリードに並ぶ「技術革新」「昔ながらの方法・法規」「時代に合うのか」という言葉を見ただけでも、NHKの受信料に対する疑問への率直な意見が展開されているのではないかとワクワクしてしまう。おまけに見出しも「強制は時代に合うか」である。

東京社説は裁判の経過をこう説明していく。

「NHKは公共放送だから、受信料は払わねばならない。放送法六四条一項にはこうある。

〈受信設備を設置した者はNHKと受信についての契約をしなければならない〉

この規定は努力義務だろうか、それとも強制的な規定だろうか――。受信契約を拒む東京都内の男性は『強制を認めているとすれば、憲法が保障する〈契約の自由〉を侵害する』と主張していた。放送法の規定は確かに契約の自由の制限にあたるように読め、憲法の『財産権の保障』など、いくつかの条文とかかわってくる」