防衛省は北朝鮮なども射程内に入る「長距離巡航ミサイル」の導入を決めた。このミサイルは相手の基地を狙う「敵基地攻撃」の能力をもつ。日本の基本政策である「専守防衛」には反していないのか。強力な武器はどこまで必要なのか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏が問う――。
朝日新聞の社説(12月13日付)。見出しは「巡航ミサイル 専守防衛の枠を超える」。

政府は「敵基地攻撃が目的ではない」

強力な武器は必要なのか、それとも必要ないのか。そうした武器の配備は「専守防衛」を越える行為なのか、そうではないのか。

防衛問題になると、新聞各紙のスタンスは左右にはっきり分かれる。社説を読み比べると、正反対の主張が論じられているので、読み手の頭の中は混乱する。しかしそこが社説を読み比べるおもしろみでもある。

防衛省が新たに戦闘機に搭載する「長距離巡航ミサイル」の導入を決めた。翼を備え、ジェットエンジンで飛ぶ。コンピューター制御による超低空飛行や迂回飛行で敵の迎撃を避け、確実に標的に命中させる。

射程圏が長く、離島へ侵攻してきた敵の上陸部隊や艦船を攻撃でき、遠くの敵の艦船にも対応できる。政府は「敵基地攻撃を目的としたものではない」と強調するが、「敵基地攻撃能力」として使って「抑止力にしたい」と書く新聞社説もある。

他国より強力な武器を持つとき、その根拠に「抑止力」という言葉が使われる。この抑止力とは一体なんだろうか。

朝日は「専守防衛の枠を超える」と批判

朝日新聞は12月13日付の社説で、新型ミサイルの900キロという射程について、こう主張している。

「これほど長射程のミサイルがイージス艦防護や離島防衛に不可欠とは言えない。長距離巡航ミサイルの導入は、専守防衛の枠を超えると言うほかない」
「むしろその導入は、敵のミサイル基地をたたく敵基地攻撃能力の保有に向けた大きな一歩となりかねない」

朝日新聞は、これまで日本が防衛力を増すたびに異を唱えてきた。「専守防衛の枠を超え、敵基地攻撃能力の保有となる」と批判し、長距離巡航ミサイルの導入に真っ向から反対する。見出しも「専守防衛の枠を超える」である。