日経も「引退で幕引きするな」

日経新聞も毎日社説と同じ30日付紙面で社説のテーマに取り上げ、前半でこう書く。

「これ以上、横綱として事件の渦中にあることは、最高位の名を汚すばかりでなく、相撲そのものへの信頼も失われかねない。自ら身を引いた決断は妥当であろう」
「しかし、これで事態の幕引きをすることは許されない」

引退を「妥当」と書き、「引退で終わらせるな」と主張するところは、毎日と全く同じである。

これだから社説は建前やきれい事を並び立てると批判したくなるのだ。もっと独自の主張や訴え、書きぶりはできないのか。

「最後のチャンス」「肝に銘じ」「暴力根絶」……

日経社説はこれまでの相撲界の暴力事件を挙げ、「大相撲では、2007年に親方らが弟子を暴行して死なせたとして有罪判決を受け、10年には横綱、朝青龍が酔って男性を殴るなど事件が続いた」と書き、「協会は研修会などを開催し、力による手荒い指導を改めるよう親方らを啓発するとともに、力士らの意識も変えようと努めてきたはずだった」と言及する。

そのうえで「ただ、今回、他の力士の模範となるべき横綱の起こした不祥事をみれば、再発防止策の効果はなかったと言わざるをえない」と指摘する。

毎日社説同様、手厳しい書き方である。寛容さなど微塵もない。

最後に日経社説はこう主張する。

「今年、大相撲は年6場所、計90日間の開催が、すべて満員となった。1996年以来という」
「ベテラン勢の奮闘や若手の台頭で、連日充実した取組が続き、女性や少年らファンの層も厚くなった。伝統ある競技のすそ野を広げ、発展させるために、相撲協会は最後のチャンスと肝に銘じ、暴力根絶へ立ち向かってほしい」

「最後のチャンス」「肝に銘じ」「暴力根絶」と使い古された言い回しである。これだから「社説はつまらない」と批判されるのだ。

一般社会から遠いのが角界だ

次に朝日新聞の社説(12月1日付)を取り上げる。

「浮き彫りになったのは、一般社会の常識・感覚から遠い角界の体質であり、日本相撲協会のガバナンス能力の欠如だ」

朝日社説は冒頭部分でこう指摘するが、一般社会から遠いところにあるのが相撲界なのである。この社説を書いた朝日の論説委員もその辺のところは理解していると思うのだが、新聞社の論を展開する社説となると、本音が書けないのだろう。これだから社説は面白くないのだ。

毎日社説もそうだが、朝日社説も貴乃花親方の態度を批判する。

「協会が貴ノ岩から事情を聴こうとすると、師匠の貴乃花親方が納得できる説明のないまま要請を拒んだ。首をかしげる行動である。そもそも同親方をめぐっては、理事・巡業部長の要職にあり、かつ暴行事件を早くから知りながら、協会への報告を怠るなど適切な対応をとらなかった疑いが浮かんでいる」

なぜ、貴乃花親方がこんな態度を取るのかを書かない。貴乃花は平成の大横綱とまでいわれた元力士である。自らの相撲道を信じてやまない男だ。貴乃花親方のヘソが曲がっているわけではないだろう。