2、一文一息の習慣をつける

考えてから話す習慣をつけるために最適なのは、「一文一息」という方法です。一文一息は一文を50字以内におさめて、一回の息の量で話す話し方です。一文ごとに息を吸うので、その間に話すことを頭の中で整理できます。

よく「間」ができるのを恐れて、常に「あー」「えー」と言っている方もいます。これは耳障りですし、聞き手にいい印象を与えません。50字以内で話すように心がけていれば一文ごとに「間」が生まれますし、その「間」で考える習慣を身につけられるのです。

3、やまびこ法で言葉を繰り返す

相手に失礼なことを言われて、ついカッとなって暴言を吐いてしまう。そんな事態になるのを防ぐには、相手の発言をそのまま心の中でやまびこのように繰り返すことです。

たとえば、「こんなことすら社内で徹底してないなんて、お宅の社員教育はどうなってるの?」とクレームをつけられたのなら、その言葉をそのまま心の中で反復します。それから「弊社の社員教育に不備があるとお考えなのですね」などと言い換えて言葉を返します。

ただし守りに入ると話がつまらなくなる

相手が感情的になっているなら、なおさらその勢いに乗らないこと。そういうときこそ、失言や暴言が出やすくなります。「間」を取ると相手のリズムを崩せるので、冷静に対処できるのです。

注意一秒、ケガ一生。たった一言の失言で、それまで絶好調だった人があっという間に失墜することもあれば、トラブルを余計に悪化させ、取り返しのつかない事態になることもあります。一流の人はその恐ろしさを知っているから、「間」を使って失言を防いでいるのです。

ただし、失言を恐れて守りに入ると話がつまらなくなります。最近の日本は、みんな守りに入ってビクビクし、活気がなくなり、閉塞感に覆われているように私は感じています。「間」を活用すれば、失敗を恐れることなく、積極的に攻める話し方をできるでしょう。

そのほうが有意義なコミュニケーションができるはずです。「話す」「伝える」というのはこんなに楽しいのだ、有益なのだ、と実感するためにも、ぜひ「間」を活用してください。

矢野 香(やの・かおり)
スピーチコンサルタント。長崎大学准教授。NHKでのキャスター歴17年。おもにニュース報道番組を担当し、番組視聴率20%超えを記録。NHK在局中から心理学を根幹とした「他者からの評価を高めるスピーチ」を研究し、博士号取得。政治家、経営者、エグゼクティブからビジネスパーソン、学生まで幅広い層に指導を続けている。
(構成=KADOKAWA)
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