ポイントは「間」を活用すること

これは政治家だけに限ったことではありません。ビジネスマンも同様です。最近では、富山のある会社の経営者が「富山の人間は極力採らない」と記者会見で発言し、批判が殺到しました。こうしたメディア対応だけでなく、日常でもビジネスマンは地位が高くなるほど発言の重さは重くなります。取引先との会話では会社を代表して発言しているとみなされます。社内での上司と部下の会話でも、たった一言でも失言をしてしまったら信用を失ってしまいます。

こういった失言を防ぐには、普段から保険という感覚で失言対策をしておくしかありません。

スピーチトレーニングを受けてくださる経営者の中には、記者会見対策などのメディアトレーニングをなさる方がいらっしゃいます。その中で失言を予防する方法をお伝えしています。ポイントは「間」を活用することです。そうすれば、誰でも簡単に効果をあげられます。

無言の時間が失言を防ぐ

「間」がなぜ失言を防ぐのか、実際の例をご紹介しましょう。

選挙投票日に放送される選挙特番。池上彰氏が候補者に鋭い質問を投げかけるのは、今や定番となっています。今回の衆議院選挙の際、小泉進次郎氏とのやりとりは失言せずにうまくかわした好例でした。

「どうしてこんなに人寄せパンダに使われるのかという思いはあったでしょう」

小泉氏にとっては失礼ともとれるようなこのような質問を池上氏は投げかけました。ムッとして「人寄せパンダじゃありませんよ!」と反論してもおかしくない場面です。

ところが、小泉氏の対応は見事でした。池上氏の質問にすぐには答えず、まずは2秒ほど無言。そのあと、「まあ、パンダだったら客を呼べないより呼んだほうがいいから、そこはしっかりとシャンシャンに負けずに役割を果たします」と返したのです。

この2秒の無言の時間こそ「間」です。

質問されて「間」をおかずに答えようとすると、真っ先に頭に浮かんだ言葉をつい言ってしまいます。これが失言につながるのです。

2秒や3秒というわずかな時間でも、人の頭は目まぐるしく働き、「どう答えればベストなのか」を考えます。さらに、一呼吸置くことで感情的にならずに済む。数秒の「間」を取るか取らないかで、失言率はまったく変わります。さらに間をとって回答する姿は、相手には余裕をもって回答しているような自信を印象づけます。

話し上手な人のなかには、立て板に水のように流暢に話す方もいます。実はこれはリスクが高い話し方です。まず失言が増える。さらに相手の頭に話の内容が残らない。上手に話すことよりも、「間」を取りながら、ゆっくりわかりやすくしっかり伝えることが大切なのです。