活況を呈する転職市場で賃金が下降している理由
そうであれば、ビジネスパーソンとしては人手不足の時代だからこそ転職して自ら賃金を上げるしかない。
ところが、残念ながらこれもあまりいい状況とは言えない。活況を呈する転職市場でも賃金は上がっていないのだ。会員登録数600万人(累積)のエン・ジャパンの転職サイト「エン転職」の求人企業が提示する年収の増減率は、2017年9月は前年同月比97%と下がっている(中央値)。
業種別でもほとんどの業種で低下し、流通・小売は84%、運輸・交通、物流・倉庫87%と、皮肉にも、人手不足感が強い業種ほど下がっている。前年同月の年収を上回っているのは好調の不動産、建設、設備のみとなっている。
その理由のひとつは全体の求人数に占める「未経験者歓迎」案件比率の増加だ。未経験歓迎案件比率は2014年9月が52%だったが、17年9月には75%となっている。職種別では営業系80%、技術系でも電気・電子・機械が66%、建築・土木が57%を占める。
▼35歳以上ミドルは前職年収の100万円下がるのが一般的
「エン転職」の岡田康豊編集長はこう指摘している。
「未経験者の採用比率が高まっていることに加えて、下限年収を下げるケースが多いのです。35歳以上のミドルでも平均で前職の年収の100万円程度下がるのが一般的です」
人手不足の影響で2013年以降、大手企業を中心に積極的な採用に動いている。だが、特殊なスキルや経験の持ち主は別として、全体的に企業が採用時の年収を引き上げているわけではない。
全体の賃金が上がらない状況がしばらく続くとしたら、後は個人の努力で社内評価を高めてキャリアアップするしかない。私たちは今、そんな時代に生きている。