ユーチューブはどこまで許されるか

【田原】じゃ、どうしてテレビはつまらないといわれるんだろう。

【鎌田】テレビはマスが足かせになっているんじゃないですか。老若男女みんなにウケなければいけないとなると、どうしても無難なものになる。それに対してユーチューブは、自分のファンだけに向けて動画をつくれます。べつにモラルに反するという意味で過激なことをしなくても、特定の層にフォーカスすることでテレビがやらないことを思い切ってできる。その差じゃないかと。

【田原】アメリカではユーチューブで注目を集めるために恋人を拳銃で撃ち、間違って死なせた事件も起きた。結果的に不幸なことになったけど、そういう過激さがユーチューブの売りじゃないんですか。

【鎌田】違います。その動画でたとえ銃弾が貫通しなかったとしても、子どもが真似したら危ないじゃないですか。そんなことはテレビだろうとユーチューブだろうと、やるべきじゃない。

【田原】そうかな。僕はテレビ東京のディレクター時代、犯罪ぎりぎりのことを何度もやって、2回捕まりました。普通のことをやっても誰も見てくれない。過激なことをしようという気持ちはよくわかる。

【鎌田】いや、ダメでしょ。リーガルでアウトなものはもちろんダメだし、法的に問題なくても倫理的におかしなことをするとレピュテーション(評価)も下がる。過激なことをする必要はない。

【田原】テレビがつまらなくなったといわれるのは、倫理規定がありすぎるからですよ。みんなクレームを怖がってるけど、僕はクレームがたくさんくる番組にしようと思って『朝まで生テレビ!』をやっている。視聴者からだけじゃない。放送は免許事業だけど、国からクレームがくるくらいのことをやらないと。ネットなら、なおさら。

【鎌田】倫理的にダメなものはダメですが、田原さんがユーチューバーになって、テレビではやりづらいことをやってもらうのはありかもしれない。オファーしたら、やってもらえる可能性はありますか?

【田原】僕はテレビにできないことはないと思う。でも、テレビは局の上の人が嫌がるんです。鎌田さんは社長だけど、嫌がらない?

【鎌田】法的・倫理的にアウトでなければ(笑)。ユーチューブは「嫌なら見なければいいじゃん」の世界なので、べつに世間の空気に合わせる必要はない。自由にやってほしいし、ユーチューブだから話せることもあるかなと。

【田原】検討してみましょう。

鎌田さんから田原さんへの質問

Q.田原さんの趣味はなんですか?

趣味はまったくないです。あえていうなら、人と会うこと。ネットの時代になってから、さらに人と会うことが楽しくなりました。言葉というのは、あくまでも表現のワン・オブ・ゼムにすぎません。直接会って表情を見れば、言葉だけではわからないものが伝わってくる。だから僕はフェース・トゥ・フェースに徹底的にこだわります。

総理大臣から犯罪者までいろいろ会うけど、とくに面白いのは世間から非難を浴びている人です。みんなからバッシングされるのは、まわりに合わせようとせず、自分の生き方を一生懸命貫いているから。そういう人は、話を聞いても真剣に話してくれる。優等生より、ずっと面白いですよ。

田原総一朗の遺言:世間から非難される人が面白い

(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)
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