話すことへの恐怖を乗り越えよう
管理職は、部下とキャリア開発について話し合うことが、なぜこれほど苦手なのか。「恐れているからだ」と、人材コンサルタント会社、アプライド・リサーチ・コーポレーション(本社:ニュージャージー州メタチェン)の副社長、マギー・サリバンは語る。たとえば、昇進を強く望んでいる部下に、まだ準備ができていないと指摘しなければならないなど、「反発を招くメッセージを伝えなければならないことがあるのを恐れているのだ」と。
社員の成長を助けることで、彼らがその部署から出ていく手助けをすることになるのを恐れている管理職もいる。だが、「キャリア開発について話し合うのを避けていたら、いずれにしても彼を失うことになるだろう」と、カイエは言う。有能な社員が、がんばってキャリアを伸ばせという励ましを上司からまったくもらえない場合、上司は自分を評価してくれていないとか、自分の潜在能力を認めてくれていないなどと思い込む恐れがある。その場合、会社を辞めることが最も賢明な道のように思えるかもしれない。
キャリアパスを描く手助けをしよう
自らの望みを完全に把握していない社員も大勢いると心得るべきだと『Getting Unstuck: How Dead Ends Become New Paths』(2007)の著者で、ハーバード・ビジネス・スクール・キャリア開発プログラムのディレクター、ティモシー・バトラーはアドバイスする。特に有能で多才な部下の場合、いくつもの分野でキャリアを伸ばせる可能性があり、選択肢を限定したくないがゆえに具体的なイメージを描けないかもしれない。その場合、上司が次のような質問を投げかけることで、最も有望な可能性を見きわめる手助けができる。
(1)これまでの仕事で、どれが最もやりがいがあったか。
(2)過去6カ月に達成したことで、どれを最も誇らしく思ったか。
(3)仕事を楽しくする要素は何だと思うか。
本音を話してくれるようになるまでに時間のかかる社員もいるかもしれない。「上司は自分がどういう立場でこの話し合いに臨むのかを明確にする必要がある。自分はメンターなのか、上司なのかを」と、バトラーは言う。「目的は部下のキャリア開発を助けることではなく、自分の部署の人材ニーズに備えることだと部下が感じたら、本当に率直な話し合いは期待できない」。