先進国の労働力不足は、ますます深刻化していくと思われる。それを解消すべく、優秀な定年退職組をうまく会社に残すための方法を紹介しよう。
新たな働き方の選択肢を退職組に説明する
労働統計局の予測によると、アメリカの求人数は2010年までに2200万人以上増加するが、民間の労働力の伸びは1700万人に留まると予想される。欧州や日本でも、労働力予測は似通った傾向を示している。
深刻な人材不足に対する解決策の一つは、定年組に残ってもらうことだ。彼らを引き留めるため、どんな方法をとれるかを紹介しよう。
まず、退職予定者に、会社は彼らを高く評価し、引き続き働いてくれることを歓迎すると明確に伝えよう。これは定年組が退職日を決めたり、次の計画を立て始めたりする前に伝える必要がある。
マサチューセッツ工科大学の労働人口高齢化問題コンサルタント、バーバラ・ピーコック=コーディは「戦略的な将来計画を立てるよう勧めよう」とアドバイスする。
今後、会社はどこに向かって進むべきだと思うか、またそこに到達するためにはどのような人材が必要かと聞いてみよう。そうすれば彼らは、自分が提供できる知識や技能を思い起こし、会社に残るための具体的な提案をするかもしれない。
柔軟な就業条件をオファーする
メールストリーム技術で知られるコネティカット州のピットニー・バウズの職場効率担当取締役、エドワード・ハフトンは、通勤時間の長さにうんざりしており、退職できる日を待っていた。
ハフトンはそれを隠そうとしなかったので、上司はうまく対応した。本人と柔軟な就業条件を考え出したのだ。従来どおりの責務を担うが、自宅に近いオフィスで働き、就業日数を減らしてよいということになった。
「通勤時間を仕事に充てることができ、ほぼ毎週、3日間の休みがとれるようになった」と、ハフトンは語る。
「その人にとっても会社にとってもうまくいく方法を見つけよう」と、『Workforce Crisis:How to Beat the Coming Shortage of Skills and Talent』(2006)の共著者で、テキサス州オースティンの調査・技術会社、nジェネラの副社長、ロバート・モリソンは言う。
ピットニー・バウズでは、フレックスタイム、テレコミューティング、パートタイム勤務、ジョブ・シェアリング、長期休暇などが就業条件に含まれることがある。同社は最近、会社と社員のニーズを両方満たす条件を編み出せるよう、イントラネット・サイトを立ち上げた。
年金規定のために、社員が会社に残ることが不可能だったり、メリットがない場合には、いったん退職して、臨時労働者として戻ることもできる。デモインに本社を置く金融サービス会社、プリンシパル・ファイナンシャル・グループは、マンパワーの「ハッピー・リターン」プログラムを通じて定年組を再雇用している。これによって退職者は柔軟な働き方ができ、雇用主は柔軟な労働力を得ることができる。プリンシパルのリクルート・多様性担当次長、キャスリーン・スーラダは、このプログラムのおかげで、必要に応じて人員を増やしやすくなったと語る。
もう一つの方法は社内の退職者復帰プログラムだ。たとえばカリフォルニア州のエアロスペースの「退職者臨時雇用プログラム」では、退職した社員が年間1000時間を上限にプロジェクト・ベースで復帰することができる。エアロスペースでは退職社員の80%がこのプログラムに登録しており、会社のことをよく知っている優れた労働者のプールを形成している。
このようなプログラムの利点は、退職する社員に「あなたの貢献はいまなお歓迎されますよ」というメッセージを伝えられることだ。また、この人材プールが利用できることを管理職に改めて思い起こさせるという利点もあると、モリソンは語る。