10月22日の衆院選は、自民、公明の与党が過半数を大幅に上回り、「安倍1強」が続くことが決定的になった。安倍政権の支持率は低迷していたにもかかわらず、なぜ野党は大敗したのか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏が「『安倍1強』のままで本当にいいのか」と問う――。
朝日新聞の社説(10月23日付)。見出しは「政権継続という審判 多様な民意に目を向けよ」。

自民の大勝利でこれまで以上に強気になる

超大型の台風21号が北上し、10月23日の東京の空は、久しぶりの青空が広がり、秋晴れの気持ちの良い1日となった。まさに台風一過である。

しかし沙鴎一歩の心はすっきりしない。暴風雨が続いている。頭の中で河川も氾濫しそうだ。

それは予想していたとはいえ、22日の衆院選で自民党が単独で過半数(233議席)を大幅に上回る議席数を獲得、さらに自民と公明党を合わせると、議席数は与党で3分の2(310議席)にも達し、「安倍1強」が続くことが決定的になったからである。自民の大勝利でこれまで以上に安倍晋三首相は強気になる。

「1党独裁」は、民意を無視してとんでもない方向に進むことがある。なぜ戦前の日本で軍部が台頭し、太平洋戦争に突入したのか。なぜ北朝鮮は国際世論を無視して核開発と弾道ミサイルに全力を挙げるのか。いずれも一党独裁の結果だ。

安倍政権を「1党独裁」と断じるのは、まだ早いだろう。だが安倍政権はどこに向かおうとしているのだろうか。いつの時代も政権の「暴走」で犠牲になるのは国民だ。今回の選挙で、有権者は安倍政権の継続を選んだ。もしも「暴走」したとき、そのツケは有権者に返ってくる。

バランスを取るべき野党は、なぜ大敗に追い込まれたのか。投開票日の翌日(23日付)の新聞社説を読み解きながら考えてみたい。

選挙結果と世論調査に大きなズレ

まずは安倍政権を倒したくてしようがない朝日新聞の社説からみていこう。

「政権継続という審判 多様な民意に目を向けよ」という見出しを付けた大きな1本社説でこう指摘する。

「政権継続を選んだ民意も実は多様だ。選挙結果と、選挙戦さなかの世論調査に表れた民意には大きなズレがある」

新聞社得意の自社の世論調査を引用しての批判だろう、と思って読み進めると案の定、そうだった。朝日社説は「本紙の直近の世論調査によると、『安倍さんに今後も首相を続けてほしい』は34%、『そうは思わない』は51%」などのデータを引きながら、「おごりと緩みが見える『1強政治』ではなく、与野党の均衡ある政治を求める。そんな民意の広がりが読み取れる」と書いている。