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では、G-DロジックとS-Dロジックの違いはどこにあるのでしょうか。それは、価値づくりの世界観にあり、(1)サービス観、(1)顧客像、(3)価値概念、の3点が挙げられます。

G-Dロジックでは、「モノ」と「モノ以外の何か」(サービス)を分けて考えます。産業分類上、第1次産業、第2次産業には、それぞれ農林水産業、鉱工業という明確な定義があるのに対して、第3次産業(第1次、第2次産業以外)には明確な定義がないのは、その表れといえます。

また、企業は製品やサービスに価値を創り込む主体、顧客はその価値を認めて対価を払い、消費する主体として位置づけます。経営活動のゴールは、顧客に製品やサービスが渡る瞬間に発生する「交換価値」を最大化することになります。

しかし、先述のように、製造業(モノ)とサービス業を分けて考えることは難しくなっています。また、価値づくりは企業の中だけでなく、顧客を交えて行われるケースが増えています。例えば、シェアリングエコノミーを代表するUberやAirbnbは、自社では車両や建物を所有せず、顧客の座席や部屋を資源として組み合わせて活用することで、価値づくりが行われています。

そこで、S-Dロジックでは、世の中の経済活動をすべてサービスと捉え、「モノを伴うサービス」と「モノを伴わないサービス」があるとします。そして、顧客が製品やサービスを使う過程で、企業の活動と顧客の活動がともに価値を生むと考えます。企業のみでは価値の最大化を実現できず、顧客と価値を共創するのです。経営活動のゴールは、交換価値の最大化に留まらず、その後の「使用価値」や、共創の現場で顧客が個別に認知する「文脈価値」を最大化することになります。

従来のバリューチェーン(価値連鎖)は、上流の供給業者から中間業者へ、そして下流の最終消費者に至るまで、徐々に交換価値が追加されていく過程を連鎖として表しており、G-Dロジックに基づく考え方といえます。