意地悪な人の言動から自分の心を守るにはどうすればよいか。心理カウンセラーの衛藤信之さんは「相手の意地悪な言動を、『真実』として心の奥まで入れる前に、立ち止まって、仕切りの外に置くこと。また、『意地悪な人から受ける刺激は脳によい影響を与える』と割り切って考えるとよい」という――。

※本稿は、衛藤信之『傷つかない練習 つらい感情から「自分を守る」思考法』(大和出版)の一部を再編集したものです。

相手の言葉はただの文字の配列

「なんでそんな言い方するの?」
「どうしてあんなことを言われたんだろう……」

誰かの何気ない一言に、深く傷ついてしまうことがあります。

その言葉が頭から離れなくて、ずっと心がモヤモヤする。あなたにもこんな経験があるかもしれません。

でも、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいのです。その相手の言葉は、ただの文字の配列に過ぎません。

たとえば、その言葉がエイリアンの宇宙語だったらどうでしょうか。意味がわからなければ、あなたは苦しまなかったはずです。

でも、「これは自分を責めた言葉だ」と解釈した瞬間、その言葉は心の中でトゲに変わります。

つまり、僕たちは“言葉”そのものに傷ついているのではなく、あなたの奥にある「意味づけ」や「相手への期待」に傷ついているのです。

悲しみの前には、こんな気持ちが隠れています。

「この人には、そう思われたくなかった」
「信じていたのに、そんなふうに言うなんて」
「わかってくれる人だと思っていた」

その奥には何かに“期待していた自分”が存在します。

でも、よく思い出してください。

あなたが誰かの期待にいつも答えられないように、相手もあなたの期待どおりには生きていません。また、あなたが相手の期待に気づかないように、相手もあなたの期待を知るはずもないのです。

暗い寝室に座っている落ち込んだ女性
写真=iStock.com/kitzcorner
※写真はイメージです

自分を守るための境界線

だから、まずはこう心に言い聞かせてみてください。

【仕切り作り】相手の言葉を心の奥に入れないための仕切り
インナー心理カウンセラーからの声かけとして、
「これは、この人の意見として受け止めよう」
「でも、この言葉で世界中の人から『君がすべてダメだ』と言われたわけじゃない」
「君はこの人に、どんな期待をしていたのかな?」
「その君の期待が裏切られても、あなたの価値は変わらない」

それは、相手を拒絶するためではなく、自分を守るための境界線です。

相手の言葉を、「真実」として心の奥まで入れる前に、立ち止まって、仕切りの外に置くこと。それだけで、心はずっと軽くなります。

もちろん、中には本当に人を傷つけるような言葉をくり返す人もいます。

攻撃的で、否定的で、自分の価値観を押しつけてくるような人、そんな人の言葉を、あなたの「内なる声」にしてはいけません。

彼らの言葉は、その人自身のストレス、未熟さ、無自覚さから出ていることが多いのです。

あなたが傷つけられたときに、その人の言葉をあなたの中心に置かないようにしましょう。

あなたがすべきことは、その言葉に「意味」を与えすぎないこと。

そしてこうつぶやいてください。

「これは、この人の世界の見方。私の世界のすべてではない」
「私は、この人の言葉を私の中心に置かない」

攻撃的な人の感情の波を自分の中に引き入れすぎない。そのための仕切りを持つ練習が必要なのです。