財政健全化の「5つの1%」

次に、具体的な消費税の充当先について確認します。よく「5%のうち、1%は社会保障だけ、4%は財政健全化といわれますが、実際は「5つの1%」で次のように構成されています。

・制度改革に伴う増―医療・年金・介護・少子化4分野の給付改善1%
・高齢化に伴う増―いわゆる「社会保障費の自然増」をカバーする経費1%
・基礎年金国庫負担1/2確保1%
・消費税導入に伴って生じる国・地方の負担増1%
・機能維持―財政赤字の純減1%

「財政健全化4%」といわれているうちの1%は基礎年金国庫負担1/2実現の分、1%は毎年夏の概算要求シーリング(※1)で問題になる「社会保障費の自然増」に充てられる分です。これらの部分は「消費税を負担する世代の給付拡充」にはなりませんが、社会保障給付財源に充てられる部分です。つまり構図は次のようにも見ることができます。

※1 財務省が翌年度の予算編成を始める際、分野ごとに予算額や各省庁が要求できる上限を目安として設定する仕組み。

・社会保障の機能強化―3%(給付改善1%、自然増1%、基礎年金1%)
・財政健全化寄与分―2%(政府の負担増分充当1%、社会保障全般の財政赤字削減1%。社会保障費の自然増分は両方に効いてくるのでダブルカウントにすれば3%)

これを財政当局からみれば、財政健全化寄与分は2%分ですが、高齢化で経済成長(≒税収の伸び)を上回って毎年増大していく社会保障費の自然増をカバーする分1%と新規の支出増になる基礎年金国庫負担1/2のための1%分は「これ以上財政赤字を増やさない」という意味で財政健全化に資することになるので、「社会保障の安定化=財政健全化」分としてトータル4%、という説明になるわけです。

一体改革法案成立後、8%への引き上げは予定通り実施されましたが、10%への引き上げは延期されましたので、現時点では増収分は3%しかありません。少子化対策の7000億円と基礎年金国庫負担1%には優先的に充当されましたが、財政健全化などそれ以外の部分は「未完成」なのです。

以上をまず押さえて、消費税を巡る各党の「公約」について考えてみます。