一見“いい人”が他人をおとしいれるために画策

先ほど述べたように、一見“いい人”が他人をおとしいれるために画策するのは、しばしば羨望による。他の誰かが能力を発揮して実績を上げ、周囲に認められる「幸福」に我慢がならない。

いがみ合いの種をまくのも、この羨望ゆえである。自分以外の人が仲良くすることに耐えられないので、ちょっとした悪口や中傷をあちこちで振りまく。その結果、周囲がお互いに仲たがいするようになれば、「してやったり」とほくそ笑む。

事実無根の話をまき散らされた被害者の1人が、会社員の女性Bさん(35歳)である。彼女は、気分が落ち込んで朝起きられず、出勤できなくなったと訴えて受診し、次のように語った。

「少しずつ、同僚が私に話しかけなくなったことに気づきました。何が起こっているのか、わかりませんでした。みんなで仲良く話していたのに、私が近づくと、急に静かになったこともあります。なぜなのかは、わかりませんでした」

「そのうち、みんなに変な目で見られていると感じるようになりましたが、その理由は、わかりませんでした。少しずつ、同僚が私から離れていきました。以前はとても親しくしていた同僚も。どうしてなのか知りたくて、尋ねたこともありますが、『そんなことない』と、あいまいに言葉を濁すだけでした」

▼重要な会議に自分だけ呼ばれなかった理由

ある日、重要な会議があり、同じ部署の社員はみな出席していたのに、Bさんだけが呼ばれなかった。その数日後、新しいIT機器が導入されるということで研修会が開かれたときも、Bさんにだけ連絡がなかった。

不安になったBさんが直属の上司に直談判したところ、上司はあからさまに冷たい視線を向けて、こう言ったそうだ。

「研修に君は参加しなくていい。その研修を受けることが必要な仕事を、君にやってもらうつもりはないから」

その瞬間、Bさんは足もとがふらついて、倒れそうになったという。「君はいらない人間だ」と告げられたように感じたからだ。Bさんはショックのあまり翌日から出社できなくなり、しばらく欠勤した後で、精神科を受診した。結局、数カ月間休職した後に、子会社に出向することになった。

後からわかったのは、恐ろしい事実だった。