「個室」「秘書」「社有車」の利用ができる
処遇については報酬が支給されている企業が約80%。3点セットと言われる個室・秘書・社有車利用では「専用の個室が利用できる」(約50%)、「秘書・専門スタッフを利用できる」(約46%)が最も多い。「社有車を利用できる」企業は178社と全体では比較的少なかったが、それでもタクシーではなく、会社の車で送迎してもらっている人が結構いる。
相談役・顧問の任期については、1年以上から5年以上の任期が存在する企業が48%と全体の半数を占めるが。それに対して「任期の定めはない」(28%)、「わからない」(9%)という企業もある。「終身」と回答した企業も2社あった。任期がないということは会社から「辞めてください」と言われて辞めるか、自分から辞めたいと言うまでいつまでも会社にいられることになる。
いくら社長を務めた会社の功労者といえども歳を重ねると心身ともに弱ってくるものだ。ある大企業で80歳の相談役の秘書を経験したことがある元女性秘書はこう語る。
「車で会社に出勤してもとくにやる仕事はありません。現役の経営陣が訪ねてくることはめったにありません。昔の取引先の引退した元社長や会社のOBが訪ねてきて雑談をするぐらいです。PCも使えないので挨拶状などのメールを出すのは秘書の仕事。たまに会社の行事や全国にあるOB会に出席するために出張しますが、その度に新幹線の切符や飛行機のチケットを用意するのも秘書の役割です。正直言って一人では何もできませんし、お守り役が私の仕事でした」
▼会社丸抱えの「優雅な老後」への風当たり
まさに会社丸抱えの“優雅な老後”の日々であり、うらやましい限りだ。
だが、そんな相談役・顧問に対する風当たりが強まっている。株主の信任を得ていない相談役・顧問が会社の意思決定に関与していることは、コーポレート・ガバナンスのうえで問題があるからだ。
大企業の一部では相談役・顧問制度の廃止や見直しを検討している企業も出始めている。
今年6月の安倍政権の成長戦略「未来投資戦略2017」においては「退任した社長・CEOが就任する相談役、顧問について、氏名、役職・地位、業務内容等を開示する制度」を、夏頃を目途に創設し、来年初頭に実施することが盛り込まれた。
それを受けて東証は8月、企業が提出する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に元社長・CEOの氏名や役職・地位、業務内容、勤務形態・条件(常勤・非常勤、報酬有無など)、任期、報酬総額などを記載する欄を新たに設けた。実施は2018年1月からである。