会社法では「相談役・顧問」は存在しない
会社法では「相談役・顧問」という役職は存在しない。
企業における最高意思決定機関は取締役会である。多くの企業では社長が「代表取締役」を務めている。また上場企業は有価証券報告書で取締役の氏名や報酬総額の開示を義務づけられている。
しかし、取締役ではない相談役・顧問の役割や人数、ましてや報酬額などの処遇について多くの企業は開示していない。株主や投資家はもちろんのこと、自社の社員すら相談役・顧問が何をしているのかよくわからない存在となっている。
その実態はどうなっているのか。
昨年、経済産業省が東証一部と二部の上場企業2502社を対象に調査を行い、874社から回答を得ている。回答率は34.9%と高かった。回答を避けたい企業も多かったはずだ。経産省は回答率を上げるために財界や業界団体に事前の「根回し」をしたらしい。
調査によると、約8割(約78%)の企業に相談役・顧問制度が存在し、現に相談役・顧問が在任中の企業は全体の6割(約62%)。そのうち社長・CEO経験者が相談役・顧問に就任している企業は約6割(約58%)に上っている。
▼相談役の仕事内容を把握していない企業も少なくない
では相談役・顧問は会社の中でどんな役割を担っているのだろうか。最も多かったのは「現経営陣への指示・指導」(約36%)、続いて「業界団体や財界での活動など、事業に関連する活動の実施」(約35%)、「顧客との取引関係の維持・拡大」(約27%)の順だった(複数選択)。
そのほかに「中長期(3年以上)の経営戦略・計画についての助言」(92社)、「年度単位の経営計画についての助言」(85社)などもあった。この設問に回答した企業676社だったので、1割程度の相談役・顧問は経営戦略にも関わっているようだ。
このように、経営のサポート役、財界活動、顧客とのつきあいと大きく3つにわけることができるが、経営のサポート役といっても、取締役でもない人がどこまで口出ししているのかは不透明だ。
中には「本社役員の人事案件についての助言」(39社)、「従業員や関係会社役員の人事案件についての助言」(29社)など人事権にも関与している人も存在する。人事にまで口を出しているとなると、越権行為と疑われてもしょうがないだろう。
驚くのは役割を「把握していない」、あるいは「特になし」の企業が、合計で回答企業の17%(116社)もあることだ。
会社の担当者ですら何をしているのかわからない、あるいは何もしていない人たちを置いている理由もさっぱりわからない、ということだ。