こう呼びかけると、全国の拠点から20人近い応募者が集まった。佐々木はそのなかから20~30代の3人を選びだした。うち2人は本社や工場で住宅の設計を行っていた技術系社員であり、もう1人は地方支店で営業管理を担当していた。いずれにしても、リーシングに関しては「まったくの素人」だ。
応募者のなかには流通店舗の経験者も含まれていた。しかし佐々木は「先入観がないほうがいい」と、あえて“素人”を優先させた。「大和ハウスの流通店舗事業は3万件の実績があり数千社とお付き合いがありますけど、SCのテナントと重なるのは、そのうちほんの1割程度。だから従来のお付き合いを知らない人のほうがいい」と考えたからだ。
イーアスつくばには221店のテナントが集まったが、そのうち核店舗と呼ばれる10の大型店を除くほとんどの店を3人の女性部隊が誘致した。茨城初出店が88、SC業態への初進出も32という数字は、彼女らの奮闘ぶりを物語っている。その甲斐あって、一部のスイーツ店には平日でも行列が絶えない。
若い女性たちに任せることで消費者ニーズをつかむ一方、プロジェクトマネジャーである佐々木が腐心したのは、巨大SCに「つくばらしさ」を刻みつけるための核店舗、言葉をかえれば「キラーコンテンツ」の選定だった。
「ただ物販店を集めるだけなら、でかいといっても、近隣に同じような大規模店ができれば存在感は半分に薄れます。だから『大きい』だけじゃない何かがないか、3年前のプロジェクトのスタート時からずっと追いかけていました」
話しながら佐々木の眼が炯々と光る。探し当てたキラーコンテンツは、3階建てSCの2階部分に2600平方メートルもの広大なスペースを占める「サイバーダインスタジオ」だった。
運営会社のサイバーダインは、地元・筑波大学の山海嘉之教授が社長をつとめる技術系ベンチャー。介護・福祉用の自立支援型ロボットスーツ「HAL」を開発し、秋からは大和ハウスを代理店としてHALのリース販売を開始した。サイバーダインスタジオは、HALの着用体験もできる実演コーナーを目玉としたロボットの博物館だ。
軍事利用を狙う米軍からもアプローチが絶えないというサイバーダインは、日本の産業界にとっても宝といえる。佐々木はその宝を射止めたわけだ。