浅草にほど近い下町の生まれ。江戸っ子の血が騒ぐのか、大仕事を任されれば「腕が鳴る」タイプである。佐々木はその日のうちに、プロジェクト成功のための“必勝プラン”を練り始めていた。

「大きなプロジェクトですから、一人だけではできません。まずは私の意見をある程度反映させるかたちで、メンバーの人選をしてもらいました」

佐々木はいま、08年10月31日の開業から間もない「イーアスつくば」のバックヤードでこう振り返る。職制上は営業本部の部長だが「イーアスつくば支配人」の名刺を持つ。

オープン以来、イーアスの盛況ぶりはすさまじい。四方へ通じる片側二車線の道路は、休日になるとイーアスを目指す車で放射状の渋滞を引き起こし、4700台分の巨大駐車場でも車の群れを収容しきれないため、大和ハウスは近隣に臨時駐車場を手当てせざるをえなかった。

世界的な金融危機を受け消費が冷え込むなかでは、大成功といっていい。ここバックヤードへも地鳴りのような喧騒ぶりが伝わってくる。

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開発に着手した時点では、技術系を除くとプロジェクトマネジャーの佐々木以下6人のメンバーが投入された。

このとき、佐々木がとくに重視したのが「リーシング部隊」といわれるテナント開発担当者の人選だった。実は湘南モールフィルの開発に当たったとき、佐々木はグループ社員とたった2人でおよそ100店舗の選定を行った。そこで次のような問題にぶつかっていた。

「SCで買い物をする方の6~7割は女性です。しかも大きなモールになるほどファッションのテナントが多くなる。それなのに、テナントを選んでいる僕らは婦人服なんか買ったことがないので、ついつい有名メーカーを優先させてしまいます。でも、それがほんとうに消費者のニーズに合っていたかというと疑問が残ります。スイーツだってそうです。こっちの店がおいしい、あっちのほうがおいしいと、好きで食べ比べをしているような女の子じゃないと、消費者のニーズはわかりませんからね」

だから、つくばのプロジェクトでは消費者としての視点、もっというと「女性の視点」を持ち込みたいというのが佐々木のアイデアだった。

大和ハウスではちょうど、希望のポストへ社員が自由に応募できる社内公募制度が始まっていた。

「ファッションやスイーツに興味のある女性、一緒にSCをつくりませんか?」