カルチャーインテグレーションも、そこから始まる。一口に企業文化といっても、その内容は様々。そこで、ビジネスとしてどのような「結果」を出すために、どういう「行動」を皆がとっていて、それはなぜなのかという「動機」の3つの因子で考えると、企業文化のありようが、意味のあるかたちでよりはっきりと見えてくる。

例えば、売り上げを上げるためにとにかく飛び込み訪問をする企業なら、それが訪問件数で報償金が出る仕組みが長らく続いていることから動き回るカルチャーができているのかもしれないと考え、議論する。なぜその行動をしているのか、その行動をすることによってどんな結果が得られているのかを議論の基準にすべきなのである。

ビジネスは“結果を出してなんぼ”の世界である。結果には、よい結果もマイナスの結果もある。売り上げが上がらない、新製品が出ないという残念な結果につながる行動は何なのかを見極め、そのマイナスの連鎖を断ち切ることも必要だ。そうしないと、新会社でも同じことが起きてしまう。

その意味では、カルチャーインテグレーションでは、どちらかに合わせるのでも違いを埋めるのでもなく、いったん既存のカルチャーを捨て、新しいカルチャーをつくるという意識で考えることが大切だ。

企業文化や業務プロセスの問題は、どちらが正しくてどちらが間違っているかの議論をすると、終わらなくなる。それまでのやり方でともに成功体験を持っていることが多いからだ。

“M&A人事感応度”が高い企業はシナジーを出している

統合後、シナジーを継続的に創出している会社に共通する特徴は、互いの「違い」に目を向けすぎるのではなく、「一緒に何ができるか」という意識で企業文化や業務プロセスの統合を考えていることである。結果と行動、動機の3つの因子で議論できれば、その過程でシナジーが出てくるプロセスも見えてくるはずだ。「選ぶ議論」でなく、「つくる議論」ができるからである。

シナジーを創出できていない会社は、このつくる議論をやらず、「違い」を埋める議論だけをしているケースが多い。

アップサイドのシナジーは、マーケット、つまり顧客との関係からしか出てこない。顧客との関係において付加価値が生まれ、シナジーが出てくる。シナジーを継続的に創出している会社では、そのことを理解し、外の視点で内部を見ている。これは経営者の仕事である。経営者が外の視点で統合を見ようと思わない限り、「つくる議論」は生まれない。