競合情報を顧客から引き出す話術とは

競合の情報は顧客から得るしかない。最近はコンプライアンスの縛りが厳しいので、以前ほどはフランクに教えてくれない傾向がある。が、相手も人間である。よい感情を抱いている相手には情報を出してくる。

いきなり、「他社の担当者からは何回くらい訪問がありますか」と聞いても身構えられるだけだ。まずは、「お忙しいですか」で始める。するとこんな会話が続く。「ええ、まぁ」→「私は週に1回来させていただいていますが、ご負担でしょうか」→「いえ、そんなことは」→「他社さんもこんなもんでしょうか」→「もうちょっと少ないかなぁ」といった具合だ。このようにして、他社の訪問回数が把握できる。

このとき、こちらが情報を欲しがっていることがばれないようにしたい。雑談の一つと思ってもらえると、慎重な態度が徐々に解けてくる。「あ、そういえば」「参考までに」などの前置きが効果的だ。

このようにして聞き出そうとしても教えてもらえない営業マンは、すでに競合に競り負けていると思っていい。

そこから信頼関係を築いていき、相談されるポジション、言葉をかえれば相手にとって一番手の営業マンになることを考えなければならない。

まず必要なのは、二番手である自社に声がかかるのはなぜなのか、つまり顧客が比較検討を行う動機は何なのかを探ることである。その理由は、大きく分けて次の2つに収斂する。「安く買いたいから」か「プロとしてのアドバイスがほしいから」。アドバイスがほしいのは、1社とだけ付き合っていると、丸め込まれてしまうのではないかという不安があるからだ。

どちらの理由かがわかれば、対策も見えやすくなる。前者の場合、価格の叩きあいになるのを避けるため、トータルで見たコスト削減や、自社の商品・サービスとは直接関係しない部分の業務改善や周辺情報を提供する。それによって徐々に相手の懐へ入り込んでいくのである。後者の場合は、何よりも「プロとしての専門知識がある」と思わせることだ。技術的な話を求める相手には技術の話を、学術的な話を好む人には研究動向を提供し、「プロだな」という認知を得るのである。

もちろん、現実には相談相手になることができず、価格競争でも有利とはいえない場合がある。実はそんなときにも活路を開くことはできる。具体的には、見積書を出すときに複数のプランを提示するのだ。

たとえば(1)機能・価格ともに競合と同レベルの通常プラン、(2)機能を絞って価格も下げた低価格プラン、(3)メリットの大きい機能をプラスして価格も高めにした高価格プラン――の3パターンを提案する。

複数プランを提示する目的は、顧客が設定した条件そのものを揺さぶることだ。条件設定をリセットすれば、もしかすると、顧客の要望によりフィットした解が出てくるかもしれない。強固に見えていた競合の食い込みが意外に浅く、「ほんとうはこんな提案を待っていたんだ」と、逆転受注につながることもあるのである。

(構成=面澤淳市 図版作成=ライヴ・アート)