良質の睡眠への近道は質より量!

【白濱】私にはどうしてみんな寝る時間がないのか不思議なんですよ。一晩、二晩、無理するならわかるんですけど、長期的にとなるとね。本当に寝る時間がないんですか?

――も、もちろんじゃないですか。朝7時に家を出て、家に帰るのは夜の9時を過ぎるのがほとんどですから。

【白濱】午後9時に帰宅して何時に寝ますか?

――午前1時とか、遅いときは3時になるときもあります。

【白濱】午後9時から午前1時まで4時間ですか。夕飯を食べたあとは?

――仕事のことを考えたり、スマホをいじったり、ゲームをしたり、テレビを見たり、パソコンで動画を見たり。その日によって違います。

【白濱】そして気づいたら夜中の1時……。睡眠時間、あるじゃないですか。

――ご飯を食べたら、すぐに寝なさいってことですか? 無理ですよ。見たいドラマはあるし、スポーツニュースも見たいし、フェイスブックやラインもチェックしないといけないし、忙しいんですから。

【白濱】だから、睡眠時間を削る?

――……。睡眠時間が一番削りやすいですから。

【白濱】ほとんどの人が睡眠の必要性を過小評価しすぎています。睡眠不足という高い代償を払って結果はどうですか? 仕事ではパフォーマンスが落ちるし、体調は悪くなるし。睡眠時間を削ることがマイナスに働いていると思いませんか?

――否定はできませんね。それでは、どうすれば?

【白濱】午後9時過ぎに帰宅するなら、午後10時に布団に入るのは現実的に無理だと思います。でも、午後11時ならなんとかなりそうですけどね。

――いや、午後11時に寝るのもちょっと……。いろいろとやることがあるので。そもそも、何時間くらい眠ればいいんですか?

【白濱】理想の睡眠時間は6.5時間から7.5時間。でも、今の生活からいきなり、それだけの時間をつくるのは難しいと思います。ただ、少しは睡眠時間を増やせると思います。その少しの違いで昼間のパフォーマンスが大きく変わってきます。脳がしっかり整理されるし、体の疲労も回復しますから。

――寝ないで頑張るより、寝たほうがパフォーマンスは上がるということですか?

【白濱】そういうことです。帰宅時間を早めることは簡単ではないでしょうから、まずは夕食後の生活を見直すことですね。私は睡眠が大切だと自覚した頃から、こう考えるようにしました。「本当に、この遊びは必要なの?」「本当に、この時間は必要なの?」と。

――本当に必要な時間、ですか。

【白濱】十分な睡眠をとる時間がないというのは思い込みです。実際には、自分でコントロールできる時間は想像以上にたくさんあるものです。その時間を見つけ出せるかどうかは、自分が時間をどう使っているのかを正直に見つめることによります。

――まあ、テレビを絶対に見なきゃいけないということもないし、フェイスブックのチェックも毎日やる必要もないし、ゲームは最初からやらなければいいだけで。

【白濱】そうでしょう。その時間を少しだけでも睡眠時間にあてる。ほんの30分多く寝ただけでパフォーマンスがアップするんですから。

――なるほど。

【白濱】良質の睡眠を手に入れたいなら、まず自分の24時間の棚卸しをすることです。睡眠は質を高めるよりも、量を増やすほうが圧倒的にいい睡眠を手に入れる近道になります。とりあえず、そこから始めましょう。

白濱龍太郎(しらはま・りゅうたろう)

医学博士・日本睡眠学会認定医。筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科統合呼吸器病学修了。東京医科歯科大学呼吸器内科・快眠センター、公立総合病院睡眠センター長ほかを経て、2013年6月からRESM新横浜/睡眠・呼吸メディカルケアクリニック(日本睡眠学会認定A型施設)院長。経済産業省海外支援プログラムに参加し、海外の医師たちへの睡眠時無呼吸症候群の教育を行うとともに、順天堂大学医学部公衆衛生学講師として睡眠予防医学の観点から臨床研究発表、講演も行っている。現在、国内企業と組み、ビジネスパーソンのパフォーマンス向上のためのオーダーメイド睡眠改善プログラムを開発中。さまざまな挑戦を続けている。