睡眠不足が続いて睡眠負債がふくらむと、その先にあるのは仕事のパフォーマンス低下、そして体調の悪化。睡眠を削って頑張っても、得るものが「不幸」では意味がない。『人生が劇的に変わる睡眠法』(プレジデント社)の著者である白濱龍太郎先生は、良質の睡眠を手に入れることこそ、幸せへの近道だという。その方法のひとつは睡眠時間をつくること、もうひとつは、昼寝を活用すること、そして最後のひとつは……。

快眠の鉄則「考えても無駄なことは考えない」

【白濱】みなさん、眠れないといわれますが、すべての人が不眠症かどうかはわかりません。

――眠れていないのは不眠症とは違うんですか?

『人生が劇的に変わる睡眠法』(白濱龍太郎著・プレジデント社刊)

【白濱】不眠症は「眠りたい」という意識があるにもかかわらず、睡眠時間が短くなったり、眠りが浅くなったりして心にも体にも悪い影響を与える睡眠障害です。その結果、昼間の活動で何か弊害があると不眠症と診断されます。

――先生のところに相談に来るのはそういう人ばかりではないんですか?

【白濱】思い込みの不眠症もありますからね。

――思い込み、ですか?

【白濱】そうです。眠れていないと思っていても、案外と人は寝ているものです。睡眠不足だからといって、すぐに不眠症だと考えることはありませんよ。

――睡眠時間が短くなって、体調が優れないと不眠症なのかと思っていました。でも、悩み事があると眠れなくなるじゃないですか?

【白濱】私もそうです。気になることがあると眠れなくなります。誰だって悩みや不安があれば眠れなくなります。

――それを聞いただけでらくになります。先生は、そういうときどうしているんですか?

【白濱】そういうときは、自分でコントロールできる悩みなのかどうかを考えます。そして、自分でコントロールできないと判断したら、考えるのをやめます。「考えても無駄なことは考えない」。これが快眠の鉄則です。

――そうなんですけどね……。

【白濱】悩みや不安があるときは、自分の行動で対処できることだけに絞りましょう。あとは考えてはいけません。そういう割り切りがいい睡眠への近道になります。それよりも、その日、楽しかったこと、これまでの人生でとても幸せな時間を思い出すほうが、快眠には効果的です。心配や悩みは脳内にストレス反応を呼び起こすだけですからね。

――ベッドに入ったら、眠ることを楽しんだほうがいいということですか。

【白濱】だからといって、楽しむことも義務づけたらいけませんよ。よく眠れる人は、「眠ろう」と努力しないでもぐっすり眠っているはずですから。眠ることを意識すると、逆に眠れなくなるということです。

――どうやって眠る準備を整えるのがいいのかも聞いておきたいです。

【白濱】そのためには、眠れないという思考回路から抜け出さないといけませんね。

――そんな回路が頭の中に……。

【白濱】眠れない不安やいら立ちを抱えて2~3週間を過ごすと、少しずつ「どうせ眠れない」という思考になっていきます。そして、ついにはベッドに入るのが嫌になります。そうなるとベッドは睡眠不足を連想させるアイコンになります。見るだけで、「また眠れない時間が始まるのか」と。この思考回路を壊すことが、睡眠不足を解消する一歩になります。