障害をもメリットに変える

効果的な説得は、相手にデータや主張や証拠を次から次へと浴びせかけることではない。押せば押すほど、相手は後ずさりする可能性が高くなる。あなたが相手に対して権力を持っているなら、仮に反対でもはっきり言うことはまずない。だが、暗黙の不賛成が、アイデア実行にどんな影響を及ぼすかは、火を見るよりも明らかである。大切なのは、そのアイデアに同意することが容易かつ納得できると感じてもらうことだ。

説得する側とされる側の間には、「信用」「関係」「信条・価値観」「利益」「コミュニケーション」という5つの障害が入り込む可能性がある。しかし、これらをすべて橋渡し役に変えることもできる。

信用……説得しようとしている相手があなたを信用していなければ、成功の可能性はほとんどない。あなた自身やあなたの資格がどうであるかという問題ではない。他人があなたをどう思っているかという問題なのだ。信用が必要になる日に備えて、あなたのあらゆる言動が信用を築くものでなければならないのだ。

関係……人々があなたに好感を持っており、他人の厚意に必ず報いる人間だと信頼している場合には、耳を傾け、賛同してくれる可能性は高くなる。逆に、あなたを知らない場合、彼らにはあなたやあなたのアイデアを信頼する根拠がないことになる。

説得の前に信頼関係を築くよう努めよう。会って話すのが最も効果的だが、不可能な場合、親しみのこもった電子メールも有効なことがある。多くの人と信頼を築けば築くほど、将来、支持を得ようとするとき、有利な立場にいることになる。

信条・価値観……相手の基本的な信条や価値観を支持し、促進するものとしてアイデアを位置づける必要がある。

相手の信条を変えることはできない。だが、「相手がそのアイデアを、信条よりさらに深いところにある基本的な価値観と合致するとみなしてくれるよう、アイデアの位置づけを変える」ことはできると、シェルとムーサは述べる。