(2)為替が「ドル高・円安方向」で安定
日経平均株価の2万円台の回復と定着に関するもう1つの条件は、前述の通り、米国の底堅い成長と利上げ見通しを背景にドル円相場がドル高・円安方向で安定することであり、次にこれをみていく。弊社では米国の実質GDPについて、2017年は前年比+2.1%、2018年は同+2.4%を見込んでいる。減税などの景気対策が成長の下支えになり、米連邦準備制度理事会(FRB)は緩やかなペースでの利上げを継続すると予想する。
6月13日、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定されることは市場にほぼ織り込まれている。ただ6月のFOMCでは、イエレン議長の記者会見が予定されており、FOMCメンバーによる経済見通しも公表されるため、年内の追加利上げのペースやFRBの保有資産(バランスシート)縮小についての手掛かりが示される可能性がある。この時、市場で追加的な利上げやバランスシート縮小開始の織り込みが進めば、米長期金利と米ドルが緩やかに上昇し、ドル高・円安の進行による日本株の押し上げも期待される。
なお弊社では、米国の金融政策について、年内の追加利上げは6月と12月に行われ、バランスシート縮小は12月に通知され、翌年3月から始まると予想している。米国で景気対策と利上げが着実に行われる限り、米利回りとドルは緩やかに上昇するとみており、年末時点における米10年国債利回りは2.7%程度、ドル円は1ドル=115円程度を見込んでいる。
本格的な定着は10-12月期頃
以上を踏まえれば、この先3カ月程度で、(1)トランプ政策の日本企業への影響について、ある程度の見極めができるようになり、(2)米国の底堅い成長と利上げ見通しを背景とするドル高・円安方向の動きも見込まれることから、日経平均株価の2万円回復に違和感はない。ただ2万円を回復した時点では、相応に戻り売りが出回ることも予想されるため、2万円の回復は一時的にとどまることも考えられる。本格的な2万円台の定着は、調整売りをこなした後、FRBのバランスシート縮小開始が今よりもう一段はっきりみえてくる10~12月期頃になると思われる。
三井住友アセットマネジメント シニアストラテジスト。東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。著書に『為替相場の分析手法』(東洋経済新報社)など。CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。マーケットレポート(http://www.smam-jp.com/market/report/)