日本において、逮捕起訴された刑事事件は99%有罪になるのが現実だ。厳しい戦いであることは承知していたが、私はあることに目をつけた。それは、検察側に犯行現場と犯行現場でのやりとりを忠実に再現する責任があることだった。岡光氏の逮捕が12月4日と考え、それと同時に実施される厚生省の家宅捜索を見越してある作戦を立案した。岡光氏は、収賄となる現金の授受を官房長室で実施したと話していた。本当は自宅で受け取っていたが、家族に捜査の手が及ばないように厚生省の官房長室で行ったと自供したのではないかという線もあったが、本人の自供通りに裁判が進むのであれば、検察は、官房長室でのやりとりを再現する責任があるということだ。
私は、官房長室の机や椅子のレイアウトをめちゃくちゃに変更することにした。ソファーをどけて椅子にしたり、間取りも徹底的に変更したのだ。
もし、検察が家宅捜索時の官房長室の間取りを信じて、裁判に臨んだ場合、全くデタラメな犯行現場の再現を行うことになり、公判が維持できない可能性すら生じるのだ。そうすれば、岡光氏は晴れて無罪となるという算段だ。
宅配伝票から何がわかるか
大きな刑事事件に関わると、いろいろなことを知ることができて、とても勉強になった。捜査当局のノウハウを得ることができた。
一般人が自宅を捜索されると聞くと、ヤバイ資料を捨てようというところまでは考えが及ぶだろうが、近くの宅配便の業者にまで捜査がいくとは思いもしないだろう。2年分ぐらいの伝票を宅配業者は残しており、誰から何が送られてきたかが詳細にわかってしまうのだ。これでは賄賂として高級ワイシャツなどが自宅に送られた記録などが見つかり、送付元との関係性が当局に疑われてしまうということだ。であれば、本当のワルは、自宅へ送られてきた荷物はすべて受け取りを拒否し、手渡しをさせるということなのだろうか。面白い発見だった。(この話続く)