例えば、施設サービスを受ける際の利用者負担は、平均的な第4段階から低所得者の第2段階になると、居住費の日額負担はユニット型個室で1970円が820円に、食費も1380円が390円に下がる。
介護サービス費は、同じ月に利用したサービスの1割を利用者が負担する。その合計が高額になると「高額介護サービス費」の支給を受けられ、月々の自己負担額の上限は最大3万7200円だ。これが1万5000円の負担ですむ。
ただし、世帯分離にはデメリットもある。例えば、子供と親世帯の両方が国民健康保険の場合、世帯が2つになることで、全体で見ると支払う保険料が従来よりも高くなる危険性がある。また、企業によっては高齢の親が同一世帯にいる場合、社員に独自の扶養手当を支給するケースもある。世帯分離をするとこれらがもらえない。
同様に自動車保険も、同一世帯なら「家族限定割引」を受けながら家族全員が保険対象になるが、世帯を分けてしまうと、一方の家族は家族限定の対象から外れてしまう。このため、全員が運転するなら保険料が高くなる可能性がある。
「介護施設などに入り、親の介護費用が大きく増える場合はメリットは大きいと思いますが、それ以外は実はあまり期待できません。世帯分離を届け出る前に、世帯分離後のコストがどう変化するのかを最寄りの市区町村役場などできちんと確認することが大切です」(井戸氏)
※すべて雑誌掲載当時