人前で喋るときに意識する「ホーム&アウェイ」

ときどき人前で喋ることがある。毎回緊張するし、来場者にとって有益な時間になったかどうかが心配になる。終演後のアンケートで「現場の様子を知ることができてすごく有益だった」などと書かれ、5段階評価で「5」が多数ついていたら安心する。

そのような聴衆の評価に触れるたび、人前で喋る際は「ホーム&アウェイ」という視点が大切だな、といつも感じる。そこで本稿では、ホームか、アウェイか、といった点を加味しながら、「プレゼンのときは、相手を味方につけるといかに楽か」という話から始めてみたい。

私の場合、マーケティング、広報、編集、ライター、インターネットについて、その業界関係者に喋る場合は完全に「ホーム」となる。対して、一度、官公庁系の人々が集まる場所で、ネットの炎上やネット上でのコミュニケーションの作法について語ったときは、完全に「アウェイ」だった。何しろ、皆さんマジメなのだ。

私は「匿名の人が多いツイッターでは、男性器の長さに関する記事は多数RTされるが、フェイスブックではまるでシェアされない」といったことを語る。ネットの珍騒動やセオリー(お約束の展開)には思わず笑いたくなるものも多いのだが、マジメな方ばかりがいる会だと、「ここは笑ってもいいのかしら……」と探り合っている感じがあり、結局、脇を見て誰も笑っていないので仏頂面を続けるしかなくなる。

もうひとつは「場所」の問題である。私がイベントをやる場合、阿佐ヶ谷ロフトAという若干のアングラ臭があるライブハウスは、完全に「ホーム」といえよう。来場するお客さんもサブカルチャー好きな人が多く、なんとなく趣味嗜好は合う。一方、もう少しオシャレだったり、アカデミックなにおいがしたりする場所では「アウェイ」となる。

そんななか、どこであろうとも「ホーム感」があるのが、大阪で行うイベントだ。大阪ではこれまでに何度も宣伝会議の「戦略PR講座」「編集・ライター養成講座」「ウェブライティング講座」で話をし、他にも何度かイベントに登壇させてもらった。私はもともと大阪には一切の縁がないのだが、とにかく大阪では「ホーム感」をおぼえるのだ。

それを最大級に体感したのが、2017年4月8日にコラムニスト・前田将多さんと、青年失業家・田中泰延さんと一緒にスタンダードブックストア心斎橋で行った「広告業界という無法地帯で電通と博報堂は何をしているのか」というイベントだ。これは、前田さんの『広告業界という無法地帯へ』(毎日新聞出版)と、私の『電通と博報堂は何をしているのか』(星海社新書)の発売記念イベントという体裁で催された。前田さんは「ヤメ電」(電通を辞めた人)として登場し、私は「脱博者」(博報堂を辞めた人)という立ち位置での登壇。田中さんも前田さんと同様に「ヤメ電」である。