NPO学習学協会代表理事 
帝塚山学院大学客員教授 
本間正人氏

ノリのいい大阪人部下とのつきあいに悩む、東北出身の口下手上司……。ビジネスの現場で県民性の違いに戸惑う人たちは少なくないようです。しかしはじめに言っておきたいのは、「ビジネスでは県民性よりも個人差のほうが大きい」ということ。「○○県人」で一括りにされたくない人もいます。

とはいえ地域ごとの気質の違いは確かにあるようです。「イラチ(せっかち)」な大阪人は信号が青に変わる瞬間、フライング気味に道路を渡ることが統計的にわかっていますし、私の講演で「なに言ってまんがな」とツッコミが入るのも関西です。東北の人はスロースターターだけれども、粘り強いという説も実感として頷けます。

また沖縄の人は「うちなータイム」という独特のゆったりした時間感覚を持っています。沖縄では飲み会が夜9時スタートだったりするうえ、定刻に全員が揃うことはまれ。時間に正確な東京から来た人はイライラするかもしれません。しかしここで大切なのは「郷に入っては郷に従え」の精神。これには理由があります。沖縄の主な交通手段は自動車で道路渋滞が多いため「多少の遅れはお互い様」という文化がある。理解しがたい違いでも、理由を知ればある程度容認できるようになるのです。

それによく観察していると通説とは違う事実が見えてくることもあります。たとえば熊本や鹿児島の女性は男性に従順なようでいて、実は男性を使うのがうまい。女性社長が多い土地柄でもあります。普段から一本気な九州男児と上手に接しているからかもしれません。

このように各地域には意外な事実がありますから、上司が部下の出身地の情報を知ることはコミュニケーションにも役立ちます。鉄道好きな私は初対面の人にはまず実家の最寄り駅を尋ね、そこからご当地の話題を振っていきます。

「岐阜の郡上八幡? あのあたりは1カ月以上続く盆踊りで有名ですよね」というように。この調子で部下に語りかければいいのです。