世の中が考える50代とはどんなイメージでしょうか……。誰もが司馬.太郎の歴史小説を読み、蕎麦打ちや陶芸を趣味にする。しかし、私は自分が50歳になって、世間と自分の感覚のギャップの大きさに戸惑いました。まだ枯れるには早すぎるのです。

なぜなら、男性の平均寿命は80歳。あと30年も残されているのです。大学卒業後、社会人として過ごした年月を超えます。その半分の15年を過ごした65歳の人を見ても元気で、老人なんていません。それなのに、守りに入った生き方で楽しいでしょうか。

やはり50代は、まだまだアクセル全開で攻め続ける季節です。40代との違いがあるとすれば、ビジネスマンとしての行く末が見えてくること。そこで「いつまで働くか」を自分で決められる状態にしておくことが重要になります。ただし「何もしない自由」ではなく、「何かしたくなったらできる自由」を獲得するのです。

現在の勤務先で継続雇用される、転職を試みる、独立して起業するといった具合に、進む道は何本もあります。そして、いずれの道に進んでも大丈夫なように、いまから自分の能力を高めていくのです。

大切なのは、勤めている会社、あるいは別の業界などで求められる人間になることです。人事用語に「ポータブルスキル」という言葉があります。業種・業態の垣根を越えて、どのような仕事や職場でも通用するスキルのことで、コミュニケーションやロジカルシンキングの能力。さらに社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどの公的資格も含まれます。

こうしたスキルを磨き、資格を取得するにはお金と時間がかかります。私は「老後設計セミナー」などで講師を務めるとき、「100万円の貯金ではなく100万円稼ぐための自己投資」を提案してきました。確かに、老後を支える資金は大事です。しかし、貯金の100万円はインフレになれば目減りします。けれども、身に付けた力は、環境がどんなに変わろうとも揺らぐことはありません。