新しいことを楽しむDNA

借金を返す、投資する。そして、儲かったものを再投資し、社会に還元する。創業から115年以上、そうしたものが脈々と受け継がれているのです。

サントリーホールなんて、非常にコストがかかるもので、一般的な経営観ではやらないほうがいいかもしれない。でも、この資本主義社会で、そういうことができるのは素晴らしいことです。ウィーン・フィルはじめ世界のトップオーケストラが公演する世界有数の洗練されたホールであり、世界にメッセージを発信できます。

こうした社会貢献事業は、収益の一部を還元することで成り立っています。ですから、収益力をあげなくてはならない。そのためにも、ほかとは異なる新たな価値を持ったものをつくっていかなければなりません。

この創業精神を理解してもらわないと、グループ会社のトップは務まりません。ビームサントリーのシャトック社長も非常に深くサントリーの創業精神を理解してくれています。私は月に一回は米国に行き、直接彼と話をしてきましたが、彼も部下を何人も日本に連れてきました。彼はイギリス人ですから、とくに山崎蒸溜所のよさがわかるのです。そのよさとは、人と自然が調和していることです。

サントリーの文化はアニミズム(地霊信仰)です。その結果として「山崎」ができている。それが世界的なウイスキー評論家から世界一と評価されるのですから、サントリーの原点である山崎蒸溜所のよさを理解できる経営者でなければならないと思っています。

私もサントリーに入って1年、佐治会長と二人三脚で経営を進め、工場などの拠点や現場を見てきました。とくに工場では、ただのビジネスをやっているわけではないことを感じ、非常にワクワクしました。それは今の仕事をするうえで支えになっています。佐治会長に誘われてサントリーに来てよかったと思います。振り返ればローソン時代も面白かった。いずれも新しいことをやるのが楽しいのです。私はそんなDNAの持ち主なのでしょう。

(國貞文隆=構成 小倉和徳=撮影)
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