衝突するストレスを恐れるな

現在のサントリーは純粋培養、かつ純血主義の傾向が強い。だからこそ、早急にダイバーシティを実現することが必要です。そのために、若干のハレーションは起こっても仕方がありません。例えば、私のチーフ・オブ・スタッフ(社長補佐)はアメリカ人ですが、彼はもともとベンチャー企業にいた元弁護士でした。彼はよく主張するので、ハレーションが生じることもある。

日本人社員からすれば、もっと周りのことを考えてほしいと思ったりしますが、海外の目線からすると彼の主張も当然なわけです。もちろん日本人社員の間にはストレスが生まれていくでしょう。でも、それがいいのです。組織はそういうストレスを越えていかなければならない。むろん私の相手となるビームサントリーのマット・シャトック社長もすごく頑固ですが、一方で非常に強いリーダーシップを持っている。いいところも、我々から見ると「うーん、困ったな」という面も両方持っている。ただ頑固なだけだったら、みんなで説得すればいいんです。

ハレーションを起こすことは、これまでもやっていました。しかし、サントリーのステージは私にとっては大きい。なぜかと言えば、国内だけでなく海外にも優秀な人材がたくさんいるからです。その中でぶつけ合っていきますから、内容も多様になります。

サントリーのよさは、創業精神を非常に大切に守っているところです。この創業精神とは、ほかにできない新たな価値に挑戦し、一生懸命つくっていこうというところです。そしてそれを広告宣伝などで、お客様に伝えていく努力をものすごくしてきた。

だから、サントリーは新しいことができなくなったらダメになる会社。サントリーが生きてくための一番大きなポイントは、常に前のめりに新しいことに挑戦することです。そこを止めてしまうと、サントリーという会社のモチベーションは落ちてしまうんです。

ビームサントリーの三カ年計画も今つくっていますが、成長戦略を重視しています。むろんビームサントリーによって生まれた借入金も必死に返すようにしていますし、ウイスキー、ビール、ワイン、健康食品など主力事業であっても、無駄な資金は使いません。しかし、成長のためにきちんとリターンがあるなら投資は惜しみません。