ローソンの経営トップが交代する。12年間、トップを務めてきた新浪剛史CEOは、5月の株主総会を経て代表権のない会長となり、玉塚元一COOが社長に就任する。昨年廃止した社長ポストを復活させ、CEO、COO職は廃止する。
玉塚氏は51歳。1985年に慶應義塾大学法学部を卒業し、旭硝子に入社。シンガポール駐在、米国ビジネススクールへの留学を経て、「経営者になりたい」との思いから、98年に日本IBMへ。だが、3社目の営業先だったファーストリテイリングで柳井正氏に会い、「経営者を目指すのならば、うちで学ぶほうがいい」とスカウトされ、5カ月で同社に転じる。その後、「ユニクロ」はフリースブームを巻き起こし、急成長を遂げる。2002年からは柳井氏の後継として社長となるが、05年に解任。その後は、自身で立ち上げた企業再生会社を経営していた。
新浪氏は、2010年に玉塚氏をローソンへ迎えた理由について、2011年のインタビューで次のように話している。
「玉塚氏とは彼がファーストリテイリング(ユニクロ)の社長だった時代に知り合い、組織を上手にまとめ上げる手腕に感嘆することが多かった。今後のリーダーには、熟慮し決断するという能力のほかに、なぜそれを断行するのか、部下たちに『肚落ち』させるという能力が求められる。玉塚氏にはその力が備わっている」(「なぜ、ユニクロ元社長を「国内CEO」に選んだか」 http://president.jp/articles/-/8577)
3月24日の交代会見でも、その評価は変わらない。新浪氏は、玉塚氏を選んだ理由として、こう話した。
「加盟店オーナーから絶大な信頼を得ている。何かあったときにも、相談は私ではなく玉塚のところにくる。コンビニエンスストアはオーナーからの信頼がビジネスの源泉。加盟店を引っぱっていくことができると評価した」
新浪氏は会見で、「チーム」の重要性について繰り返し強調した。
「東日本大震災以降、チーム経営と人材育成を最も重視してやってきた。12年務めてきて、トップがあまりにも強いと、人材育成やチーム経営を自分で壊してしまうのではないかとも考えた。強固なビジネス基盤を活用して飛躍することは1人ではできない。チームワーク、その中のリーダーが今のローソンには必要だ」
新浪氏は「カリスマ経営者」として、卓越した実績を残してきた。業績不振にあえいでいたローソンに、三菱商事から乗り込み、再建を任された。社長就任時は43歳。異例の若さだったが、大規模なリストラや加盟店との関係見直し、「おにぎり屋」などのヒット商品の開発などで、業績はV字回復。現在まで10期連続の営業増益を達成している。
一方、玉塚氏の古巣であるファーストリテイリングも、社長に復帰した柳井氏の手腕で、業容を拡大し続けてきた。2005年8月期の売上高は3839億円だったが、2013年8月期には1兆1430億円となっている。
強い個性と卓越した実績で知られる経営者の「次」をいかに担うか。会見で配られた「自己紹介」には、自身の強みとして「打たれ強いこと、できるまで粘り強くやりぬくこと」と書かれていた。その明るさが、加盟店オーナーからの支持を集めている。「チーム」での飛躍をいかに実現するか。リベンジマッチの舞台は整った。