農業で働く大人の姿を見せる

――農業業界では人材が定着しにくいという悩みもよく聞きます。

【澤浦】その通りです。作物を育てる技術やノウハウを習得するのに10年くらいかかります。技術を持つ人をどう育てていくのか、定着させていくのかが次の課題です。

――人を定着させるために取り組んでいることはありますか。

【澤浦】農業で長く働いてもらうには、それで安定した生活を送ることができ、家も建てられるくらいの給与や報酬を払えないといけないですよね。それを可能にするビジネスモデルの構築が不可欠であることは言うまでもありません。加えて、働きたい人が気持ちよく働ける環境を整えていく。私たちが職場内託児所をつくったのもそうした思いからです。

――農業によって働く人の生活も豊かにしていく、「人づくり」の理念にも通じるわけですね。
社内の託児所では、専任の職員と子どもたちがのびのびとすごしていた。

【澤浦】そうです。託児所については、これを職場内につくることで子どもが親の働く姿を見ることができます。子どもたちは「パパがやってる仕事を僕もやりたい」「僕も一緒にトラクターに乗りたい」と言います。トラクターに乗っている大人がカッコよく見えるからです。そういう大人の姿を見て育った子どもは、「自分もお父さんみたいにカッコよく働きたい」と仕事に対して積極的に関わろうとするでしょう。職場でいい仕事をするから、所得も高くなり、幸せになれる。子どものうちからポジティブで前向きな仕事観を培える環境を整えることは、とても大事なことだと思っています。

――託児所が会社の真ん中にあるのはそういう理由なのですね。人材の問題に関連して、採用する際の判断基準があれば教えてください。

【澤浦】感謝する相手として、両親または育ててくれた人の名を挙げられる人を採用したいと思っています。なぜなら、感謝する対象に親が含まれていない人は、上司や目上の人に敬意を払うことができないからです。そういう人は、いくら仕事では優秀でも、社内の乱れやトラブルを引き起こす原因になります。もうひとつ挙げるなら、お金にルーズな人も要注意ですね。どんなに一生懸命に仕事をしても、お金で身を滅ぼすこともありますから。