これまで、トップランナーである農業法人の経営者7人(※)に「農業生産法人が挑むビジネス化と成長戦略」と題して、「農業のビジネス化」をどのように実現してきたのかをインタビューしてきた。その内容は2016年8月から2017年2月にかけて対談形式で本サイトに連載してきている。それぞれの経営者には農業経営の現場で考えたこと悩んだことを本音で語っていただき、それらを農業経営のビジネスフレームワークで整理することによって、これまでベールに包まれていた農業法人の経営を可視化した。

(※:舞台ファーム・針生信夫社長、鈴生・鈴木貴博社長、こと京都・山田敏之社長、早和果樹園・秋竹新吾社長、サラダボウル・田中進社長、六星・軽部英俊社長、野菜くらぶ:澤浦彰治社長[連載順]))

農業の「ビジネス化」と「経営者」の重要性

本稿では、連載の総括として連載後記と、それをまとめた書籍(『アグリビジネス進化論 新たな農業経営を拓いた7人のプロフェッショナル』)について紹介をいたします。この中で取り上げたテーマは以下のようなものです。

・大規模農業法人はどのような経営をしているのか?
・収益性が低いと言われている農業でどのように収益を上げているのか?
・どのような発展の過程を経て、現在に至ったのか?
・今後、どのような戦略で成長しようとしているのか?

本連載は経営に関する要素を15項目設定し、経営の主要トピックを網羅的に把握するように対談形式で実施しました(図1)。企業が収益を上げるためには、経営の個別要素だけではなく複数の要素を有機的に結びつけることで、ひとつの経営体として機能させることが重要となるためです。生産がどれだけよいとしても販売する仕組みや商品を運ぶ物流、それらが経営のビジョンや戦略などとの整合しなければ事業としては成立しません。

オンラインの連載では対談のすべてを掲載することはできませんでしたので、15項目の中から特徴的な取組みをピックアップしました。連載が進む中で掲載できなかった項目についても教えてほしいとのリクエストをいただくようになったので、このような声にお応えするために全15項目×全7社を網羅し、ビジネスフレームワークに基づく戦略の整理、各社のサマリーも加え、書籍としてまとめました。経営に関する要素15項目を網羅的に俯瞰し、農業ビジネスのリーダーに共通する資質や特徴と、独自に追求したビジネスモデルを体系的にまとめることで、農業ビジネスの成功要因、例えば、卓越したビジョン、経営危機の克服、差別化されたビジネスモデルが見えてきました。

▼書籍『アグリビジネス進化論』の特徴
・経営についての網羅性
・ケーススタディアプローチ
・対談形式
・7社横比較での分析

明らかになった農業のビジネス化のポイント(特に7社横比較での分析を中心)が何であったのかをこれ以降で記載していきます。