今後に向けたビジネス化の方向性と問題提起

農業が産業化するためには、他の業種を見ても明らかですが、産業全体をけん引するトップランナーが必要です。そのトップランナーとして対談でご紹介した7社のような大規模農業法人においても更なる成長が必要です。

『アグリビジネス進化論』有限責任監査法人トーマツ・農林水産業ビジネス推進室(著)プレジデント社刊

今後の成長戦略として、各社とも異業種とのコラボレーションを重視していました。自社単独での成長だけではなく、異業種とのコラボレーション、生産者同士の連携、さらにはM&Aなどを通じて、多様な農業のビジネス連携が加速していくものと思われます。

産業化には「モデル(型)」とそれを展開する推進者が必要であり、農業法人の場合、「推進者=経営者」です。各社はそれぞれに「モデル(型)」はありますが、産業全体で見れば、モデルの質と規模の面では更なる取り組みが必要です。実際、登場いただいた農業法人は、大規模とはいえ売上数十億円規模であり、他産業では中小企業の規模というのが現状です。現在の経営規模では自社ですべてを担うことは難しいので、「選択と集中」と「外部活用(アウトソーシング)」の2つも成長のポイントになります。

トーマツではこうした課題に対応するために、農業に特化した「農林水産業ビジネス推進室」を立ち上げ、以下のような取り組みを行い「農業のビジネス化」を推進しています。

・ビジネスモデル(=型)の構築
・トップラインを伸ばす「ビジネスデザイン」
・異業種も連携したコンソーシアムの組成、各種マッチング、コラボレーションの促進
・マネジメント力強化に向けた農業経営者の育成など

こういった取り組みを通じて、産業を牽引する農業法人が1社でも多く出現することが、今後の農業の発展に必要だと考えています。

なお、本稿については、執筆者の私見であることを申し添えておきます。

有限責任監査法人トーマツ
有限責任監査法人トーマツは、日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッドのメンバーファームの一員である。監査、マネジメントコンサルティング、株式公開支援等を提供する、日本で最大級の会計事務所のひとつ。
農林水産業ビジネス推進室
農林水産業ビジネス推進室はトーマツ内の農業ビジネス専門家に加え、農業生産法人などの農業者、小売、外食、食品メーカー、金融機関、公官庁、大学他専門機関など外部組織と連
携し、日本農業の強化・成長を実現するための新しい事業モデルの構築を推進している。詳細はWebサイト(https://www2.deloitte.com/jp/aff)参照。
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