次に考えられるのは相続放棄だ。ただ、裁判所に相続放棄の申し立てをしただけでは管理者責任から免れられない。裁判所に30万~100万円の予納金を納め、相続財産管理人選任の申し立てを行う必要がある。予納金は相続財産管理人が行う管理業務の経費や報酬を支払うための資金となる。

しかし、この手続きを理解している人は非常に少なく、うっかり管理者責任を持ち続けている人は多い。管理者責任がある以上、空き家が原因で事故が起きれば当然賠償金が請求される。

また、すでに遺産を相続している場合、現金などプラスの遺産を使っていることも多いため、現実的にこの選択は難しい。

そこで私がおすすめするのは、200万円程度で片がつく「解体」である。ある程度の人口を擁する地域なら、駐車場にすることで税金プラスアルファの収入を得ることも可能だ。

「売却」も空き家への対応としては正解である。「田舎だと売れない」と思われるかもしれないが、それは「希望の金額で売れない」だけ。タダ同然の金額であれば、低所得者向けに空き家を改修して安く貸し出そうと購入する人もいる。一定数のニーズがあるのだ。

所有者本人が認知症になっていたりすると、「解体」も「売却」も手続きが複雑になる。親が健康なうちに対策をとるべきだろう。

上田真一

NPO法人空家・空地管理センター代表理事。北斗アセットマネジメント代表取締役。オハイオ州立大学卒業。リクルートなどを経て、空家・空地管理センターの事務局長として事業を立ち上げ、現職。
 
(大高志帆=構成 小倉和徳=撮影)
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