「会社にしがみつく」という意識はなかった
少し前にもこんなことがありました。2013年5月、セブンプレミアムのワンランク上のセブンゴールドのシリーズの新製品で、インスタントラーメンの袋麺「金の麺 塩」を発売する当日のことです。
「この商品の質は販売できるレベルではない」と、6000万円分の商品をすべて全国の店頭から回収し、廃棄する決断を下しました。目先の損失よりも、発売した場合に生じるダメージが大きいと考えたからです。
もし、わたしのなかで会社と仕事が一体化していたら、とりあえず6000万円分の商品を売り切ってから、改良や改善を実施させたでしょう。
セブン-イレブンの創業も同じです。わたしが発案したのは40歳ごろで、イトーヨーカ堂の取締役に就任していました。もし、わたしのなかで会社と仕事が一体化していたら、創業者であるオーナー社長が反対するのを押し切ってまで、遂行しようとは思わなかったでしょう。
会社と仕事とは別で、「会社にしがみつく」という意識を持たなかったからこそ、反対にあっても、未来を起点にして、跳ぶ発想をすることができたように思います。「会社にしがみつく」という意識を持っている限り、新しいものは発想できません。
※本連載は書籍『わがセブン秘録』(鈴木敏文著 取材・構成=勝見明)からの抜粋です。