一歩先の未来へとジャンプする「跳ぶ発想」
新しいものを生み出すといっても、わたし自身、特にそんなに難しいことを考えてきたわけではありません。世の中にすでにある多くのもののなかから何かを見いだし、結びつける。
わたしも、これまで多くの新しいものを生み出してきましたが、それは何かを創造したわけではなく、それまで結びついていなかったもの同士を、あるいは、誰もが結びつくとは思っていなかったもの同士を結びつけるということを繰り返してきただけです。
セブン-イレブンの創業も、海外研修で出かけたアメリカでたまたまセブン-イレブンというコンビニエンスストアを見つけ、それを日本の小型店と結びつけて発想しました。
当時、日本は大型の総合スーパーマーケット(GMS=ゼネラルマーチャンダイズストア)の全盛時代で、スーパーが各地に進出する一方で、商店街の小型店は凋落の一途をたどっていました。そのため、日本へのコンビニエンスストアの導入については、学界からも、業界からも、社内からも、「小型店が成り立つはずない」「無理だ」「やめろ」の反対論の大合唱が巻き起こりました。
わたしから見ると、反対論は「大は小に勝つ」「大きいことはいいことだ」という過去の延長線上での考え方でした。
一方、わたしは管理畑でしたので、小型店の凋落の原因について、違う視点からとらえていました。
中小の小売店の経営が難しくなったのは、大型店の進出が原因ではなく、市場の変化に対応できなかったことにある。ならば、コンビニエンスストアの仕組みを導入すれば、大型店との共存共栄が可能になるという、一歩先の未来像を描きました。
つまり、過去の延長線上ではなく、未来へとジャンプし、「未来を起点にした発想」で考えた。いわば、“跳ぶ発想”です。
セブン-イレブンでのおにぎりやお弁当の販売も、流通業として前例のない自前のセブン銀行の設立も、上質さを追求してプライベートブランド(PB)商品の常識をくつがえしたセブンプレミアムの開発も、同様です。
最近では1斤6枚入りが256円(税込み)と、ナショナルブランド(NB)の売れ筋商品の1.5倍の価格にもかかわらず、大ヒットした「金の食パン」も、跳ぶ発想から生まれました。