「先送りがち」の人は禁煙や貯金も無理

非認知能力の重要性を示す実証例は日本にもある。神戸大の西村和雄教授らによる研究では、「嘘をついてはいけない」「他人に親切にする」「ルールを守る」「勉強をする」という4つのしつけを「受けた」と答えた人は、「受けなかった」と答えた人に比べて、年収で86万円の差があった(図3)。

非認知能力は、幼少期に鍛えたほうが効果が大きいといわれているが、10歳前後で頭打ちになるIQに比べて、それ以降も伸ばすことができると考えられている。このため最近では非認知能力を鍛える手段として、部活動や社会奉仕活動などが再評価されている。だが「非認知」を言い訳に、部活動ばかりになれば親は不安になるだろう。中室氏は「2つの能力を同時に高める方法もある」と話す。

「たとえば『勉強の計画を立てさせる』。計画を立てる力がつけば、『先送り行動』を抑止する自制心も身につく。大阪大学の池田新介教授らの研究によると、先送り行動をとる人は、学習を先送りするだけでなく、ダイエットや禁煙、貯蓄なども先送りすることが示されています」

無計画な「受験戦争」で燃え尽きた子供は、非認知能力を伸ばす機会を失ってしまう。子育てにも科学的根拠が必要だ。

慶應義塾大学 准教授 中室牧子(なかむろ・まきこ)

1998年慶應義塾大学環境情報学部卒業。日本銀行、世界銀行を経て、米コロンビア大学博士課程修了(Ph.D.)。2013年から現職。専門は教育経済学。著書に『「学力」の経済学』。