役所の都合ではなく市場の声に耳を傾けよ

情報公開をめぐっては、東京五輪の会場選びで驚くことがありました。これまで五輪水泳センターについては、東京五輪の組織委員会から「2万席が必要」と聞かされていました。ところが10月25日に国際水泳連盟のコーネル・マルクレスク事務総長へ直接尋ねたところ、「1万5000席でいい」とあっさり言われたのです。あっけなく2万席の根拠が崩れたので驚きました。

組織委からの伝言で条件を聞くよりも、国際オリンピック委員会(IOC)に直接問い合わせたほうがスピードアップが図れます。五輪を持続可能なものにするには、どんな条件が必要なのか。あらためて情報公開を徹底したうえで、都民の皆さまの納得が得られる結論を出したいと考えています。

情報公開は規制緩和と一体で進めることで、より大きな力を発揮します。私がその重要性を知ったのは、1993年に総務政務次官として取り組んだ「地ビールの解禁」と「携帯電話の買い取り制度の導入」という2つの規制緩和でした。地ビールは一時のブームは落ち着きましたが、ここ数年、クラフトビールと名前を変えて成長している市場です。また携帯電話は、94年に高額なレンタルから低額な販売に変わったことで、爆発的な普及が始まりました。

現在、国は「『岩盤規制』改革の突破口」と謳って国家戦略特区を進めています。しかし、これは私に言わせれば「嘘っぱち」です。特区制度の本来の目的は、特区での成功例を日本全国に広げることです。ところが全国に広がっている特区は「どぶろく特区」ぐらいで、ほとんどは「特区を設けた」というアリバイづくりで終わってしまっています。

もう一度申し上げます。ポイントは徹底した情報公開です。役所の都合ではなく、市場の声に耳を傾け、官民の知恵を集めれば、必ず突破口は開けるはずです。規制緩和にしても、国内レベルではなく、世界レベルの緩和が必要になります。東京の競争相手はNY、ロンドン、上海、シンガポールといった世界の諸都市だからです。国では調整に時間がかかりますが、東京ならスピード感を持って実現できます。さらなる「希望」をみつけるため、皆さまの知恵をお借りしたいのです。

小池百合子(こいけ・ゆりこ)
1952年生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』などでキャスターとして活躍。92年政界に転身し、環境大臣、防衛大臣などを歴任。2016年、東京都知事に就任。
(構成=藤井あきら 撮影=原 貴彦)
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