社長も財務部長も不在。五輪費用が膨らむ理由

いま東京はこれまでに類を見ない重大な局面を迎えています。首都として初めて経験する人口減少、世界一の速度で進む超少子高齢化、そして2020年に迎える東京オリンピック・パラリンピック。これらを乗り切るために、私は「東京大改革」を実現すると申し上げました。こうした東京の問題は、日本全体の問題でもあります。私が都知事を志したのも、東京から日本を変えるほうが改革の早道との思いがあったからです。この連載では私が起こそうとしている東京発の大改革、すなわち「東京ビッグバン」の狙いと進捗を随時お伝えしていきたいと思います。

目下の課題のひとつは、東京オリンピック・パラリンピックの開催費用についてです。今回の東京五輪では、「調整会議」という場所で開催費用などの重要事項を協議することになっていました。参加しているのは、組織委員会、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラリンピック委員会(JPC)、文部科学大臣、五輪担当大臣、そして東京都の主に6者です。

ところが内実を調べてみると、調整会議の議長はもちまわりで、責任の所在が不透明になっていることがわかりました。企業にたとえれば、社長も財務部長もいない状態というわけです。招致段階で7340億円だった大会経費が、3兆円を超える規模にまで膨らみつつあるのも、ガバナンスが機能してこなかったからです。

「レガシーを東京に残したい」という競技団体の思いもあるでしょう。そのお気持ちはよくわかります。施設整備は「アスリートファースト」で考えるべきです。ただ、費用が膨れ上がれば、五輪そのものの継続性が危ぶまれるということにもなりかねません。すでに東京大会の次の候補地選びでは、ハンブルク、ボストン、ローマといった都市が招致活動から撤退しています。大会経費の膨張に歯止めをかけることは、主催都市としての責任でもあるのです。

山積する問題をどうやって解決していけばよいのか。民意に耳を傾けながら、よりよい解決策を模索していくのが政治家の仕事です。東京都知事選挙を通じて、都政に限らず、政治全般にモヤモヤした思いをお持ちの方が数多くいらっしゃることも実感しました。そうした関心の高まりは、「政治を学んでみたい」という期待となり、また「自分も政治家になってみたい」という想いへとなりつつあると感じています。

政経塾「希望の塾」

そうした声を受けて、10月30日から政経塾「希望の塾」を立ち上げることにしました。これは「政治のことを、もっと知りたい」という思いに応える場所です。政治のこと、経済のこと、地方行政のこと。あるいは政治家自身や選挙のこと。これまでは身近になかった知識に触れ、様々な人に出会うことで、明日への希望を見つける場となるよう、工夫します。

熱意だけで改革を推し進めることはできません。改革には緻密な政策や知識、そして何より、ともに実現に向かう同志が必要になります。「希望の塾」は志を同じくする人々が学び合える場です。主義主張や党派を超えて、政治に関心をもち、改革を志す人々の集う場なのです。塾について、記者の皆さんからは「『小池新党』を立ち上げる準備なのではないか」と聞かれることがあります。私は、あくまでも新党は手段であり、東京や日本にとって重要なことは、スピード感をもって改革を進めていくことだと考えています。

私はこれまで、細川護熙氏の日本新党、小沢一郎氏の新進党や自由党、さらには保守党などの多くの新党立ち上げを経験してきました。新党を立ち上げるには、どれだけのエネルギーが必要なのか、よく知っています。「東京大改革」は喫緊の課題です。エネルギーを分散させてしまえば、余計な時間がかかってしまうでしょう。

※10月30日からスタートする政経塾「希望の塾」とは●対象は、18歳以上で日本国籍を有する人。都外在住者も対象。事前の申告が必要だが、政党に党籍があっても申し込み可能。第1期は2016年10月~2017年3月で、講義は全6回。受講料は一般男性5万円、女性4万円、学生(25歳以下)3万円。なお、申し込みは10月20日までのため、すでに締め切られている。
https://koikejyuku.tokyo/