社員の「行動」はレシートで把握される
レシートに時刻があれば経費の支出がシナリオとして理解できる。手書きの領収書だとその場の絵図が思い浮かぶだけで二次元の世界にすぎない。しかし時間軸ができると当事者が動き出すのである。
たとえばある社員が、顧客への商品説明のために、四国の高松まで日帰り出張したとしょう。羽田空港の売店でクッキーの詰め合わせを購入して、摘要に「お品代」と書かれた2000円の手書き領収書を提出すれば、「顧客宛て手土産」としてすんなり処理できる。しかしそのレシートに19時と印字されていたらどうだろう。顧客への手土産に使ったというシナリオは崩れる。
飲食を伴う打ち合わせで20時に精算してレシートを受け取り、駐車場から出庫した時刻が22時であったとしよう。その2時間は何をしていたのか、業務である説明がなければ2時間分の駐車場代は払えないことになるだろう。
企業のケースではないが、生活保護申請の相談に乗っている人は申請者の生活費などを把握するため各種の領収書、レシートをチェックする。その際にコンビニのレシートだと時刻が入っているので生活リズムが崩れていることなども読み取れるのだそうだ。
逆にタクシーのレシートには時刻が入っていないものが大半なので、勤務時間中に営業で使用したのか、時間外で私用に使ったものかが判別できないことが多い。
また手書きの領収書だと、送料はお品代に含まれるが、百貨店のレシートであれば、送料が品代とは別に印字される。このため客に手土産として持っていったはずの商品が、社員の自宅に配送されていたことをレシートの記載から突きとめた経理担当者もいる。大手書店のレシートなかには本のタイトルを検索できるものもある。
またレシートでは飲食人数も記載されているので、レシート面から単価が計算できる。このため5000円を基準とする交際費にあたるかどうかの判断もしやすい。
コンプライアンス面の運用に加えて、精算処理の手間と労力という観点からも、会社側は明細が記入されたレシートを積極的に利用していくべきだろう。