「盛り土→地下空間」変更がバレるのを恐れたのは誰か

築地市場は東京都の計画通りであれば、今年11月7日に豊洲新市場へと移転するはずだった。ところが、「都民ファースト」を掲げて圧倒的な世論の支持を得た小池百合子都知事が、これに「待った」をかけた。土壌汚染対策で専門家会議が提言していた「盛り土」がなかったことが発覚し、建物下には、コンクリートで閉じられた「謎の地下空洞」があったからである。

豊洲の移転予定地

土壌と地下水を調査した結果、環境基準値を超えるベンゼンやヒ素が検知された。汚染が出たからには、農水省もそのままの状態で移転を認めるわけにはいかない。連日のようにメディアが報じた“怪しく広がる地下空洞”には、誰もが「不正」の匂いを感じた。

まるでミステリーの様相を呈した「豊洲新市場問題」は、以降、次々と飛び出す新事実で二転三転する。

「盛り土を地下空間に代えたのは誰か?」という血眼の"犯人探し"の結果、10月13日に都が開示した黒塗りの議事録(通称「のり弁」)から、「豊洲新市場建設工事基本設計」の受注企業である設計会社が「盛り土ではなく地下空間を」と提案した発言が見つかった。そのため、豊洲問題の追及はひとまず終息したかにみえた。

しかし、実はこの議事録開示で「豊洲新市場の謎」が解かれたわけではない。というのも、「地下空間を発案した“犯人”が見つかった」ことが報じられてはいるものの、その犯人が「盛り土なし、地下空間設置」の“言いだしっぺ”なのかどうかが結局、不明のままだからである。

それ以上に気になるのは、汚染対策に伴う変更がなぜ隠蔽されたのかが、いまひとつ腑に落ちないことだ。混迷をきわめた犯人探しに振り回される一方で、この奇妙な隠蔽劇の理由と背景はいまだに不明なのである。

いったい誰が、何を露見することを怖れての保身と隠蔽なのか。今回から数回に分けて豊洲新市場の経緯を検証し、その解明を試みる。