決裁権者は少数に、決裁ポイントは簡潔に!

役職役職で見るべきポイントも違うし、判断する内容も違う。課長が見るところと知事が見るところは違う。だから、当該決裁権者が何を決裁するのか、きちんと明示する決裁フローにしてくれと指示を出した。僕のところに上げるときにも、資料をドーンと上げて来るのではなく、僕が決裁するポイントをしっかり簡潔にまとめてくれと。そして形式的な決裁権者はできる限りなくて欲しいと。

こうして何十人もが形式的にハンコを押す決裁フローはかなり整理できたが、まだまだ改善の余地があるだろう。

豊洲新市場において、建物下に盛り土がなく地下空間が存在したが、その工事が完了するまで、夥しい数の職員がハンコを押しているはずだ。すなわち皆が皆、地下空間の存在に疑問を持たなかった。地下空間を設けることが、土壌汚染対策に反しているとは誰も感じなかったのだ。地下空間を設けることが土壌汚染対策として明らかに間違っているものではないからこそ、何十人もの職員がハンコを押した。実際、専門家の間から、地下空間の合理性が主張され始めている。

今回の市場長の更迭理由が、事情を把握しないまま決裁したということであれば、今後、小池さんのところに上がってくる、とんでもない数の決裁について小池さんはどう臨むのか。知事のところに上がってくる決裁についてすべてを完璧に把握して決裁しなければならなくなる。そんなことは不可能だ。

役職役職で決裁する範囲を明確化して、責任を負う範囲を明確化しなければ、小池さんは自分の首を絞めることになる。

係長レベルではどこまで把握しなければならないのか? 課長代理レベルではどうなのか? 課長レベルではどうなのか? 部長レベルではどうなのか? 局長レベルではどうなのか? 副知事レベルでは? 知事レベルでは?

組織的な意思決定があれば、すべての役職者がその決定に従っているかどうかチェックする義務が生じるが、組織的な意思決定がなく、現場から徐々に方針が積み上がってくるようなときには、現場現場で最もその問題に詳しい役職者が合理的に判断したことが尊重される。

市場長について、事情を把握せずに決裁したという理由だけで処分をすると、今後一番危なくなるのは小池さんだ。知事は都政すべてを完璧に把握することなど不可能だからだ。都庁の決裁フローを再検討し、役職役職の決裁権の範囲を至急に見直すべきだ。

さらに、組織のメンバー全員が従う義務が生じる組織的な意思決定をきちんと行うルールを明確化すべきだ。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.27のダイジェスト版です。全文はメールマガジンで!!

(撮影=市来朋久)
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